SCAJ主催初級カッピングセミナー体験報告

当日の講習

テクニカルスタンダード委員会紹介とスペシャルティコーヒー誕生の背景

冒頭、スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)でカッピングの手順や技術等を所管しているテクニカルスタンダード(TS)委員会(詳細な活動内容は委員会のFBページをご覧になると良いと思います)について紹介がありました。TS委員会の目的は「品質の評価基準の普及」で、その方法として(1)カッピングセミナー、(2)定義(欠点豆等を確認)、(3)カッピング大会の運営を実施しているとのこと。

そして、スペシャルティコーヒーの誕生した背景・環境をざっと説明してくれます。

USDA Economic Researchより

まず、1950年代、アメリカではコーヒーの需要が高まるとそれを満たすために一定の品質のコーヒーを安定供給することが課題となり、ロースターは消費者の需要を満足させるため、多くのコーヒー豆を買い付け、我先に供給しようとしました。この結果、ロースター間での価格競争に陥り、低品質のコーヒー豆が市場に大量に出回ることとなってしまいました。

一方、コーヒー以外の飲み物において様々な香りや味を体験したことによって消費者はコーヒーの風味に満足できなくなったと言います。

結果として供給側はこの消費者動向を読み誤り、低品質のコーヒーを供給し続けた結果、長らくコーヒー市場は横ばいの状況を続けることとなりました(上の消費動向を参照)。さらに一人当たりの飲用率もさがったとのこと(この際、データ1954:77.8%, 2003:51.1%, 2004:49%, 2018 49.8% (国内飲用率)についても紹介があったのですが、出典を確認できませんでした)。

その状況を打破しようと風味(Flavour)、香り(Aroma)、味(Taste)を重視し、品質の向上を求めるロースターがでてきたことがスペシャルティコーヒーの誕生の背景としてあったとのこと。さらに、それがErna Knutsen氏らによる流れの言葉による肉付けへとつながっていったそうです。

そんな観点で品質管理の重要性について再確認したところで、いよいよカッピングに内容が移っていきます。

カッピングについて

会場では席次配付あった5つのペーパー(①スペシャルティ―コーヒーの定義、②SCAJカッピング・セミナー開催に際して、③コーヒーのカッピングにおいて正しい評価を行うための液体の吸い方の基本事項、④カッピングフォーム、⑤Sensory Lexon(和訳含む))に触れつつ、そのエッセンスについて軽く説明がありました。

ちなみにSCAJのカッピングフォームはCup of Excellence(一部の国で行われているコーヒー豆の国際的な品評会)のものをベースとつつ、評価の順番を温度の変化を踏まえたものにしています。つまりSCAJは(1)風味特性、(2)アフターテイスト、(3)酸味、(4)マウスフィール、(5)クリーンカップ、(6)スィートネス、(7)ハーモニー、(8)オーバーオール、が温度の高い順に評価しやすいこととなっているみたいです(これはあくまで評価がしやすいだけで、別にそこまでこだわる必要はないそうです。つまり、冷めてもアフターテイストや酸味は感じ取れるし、評価の対象ともなるということです)。

カッピングフォームの具体的な項目の確認

以下、カッピングフォームの個別項目についての説明についてです(ただし、テイスティングの評価の順番とは異なりますのでご留意ください)個人的にはクリーンカップの説明がわかりやすくてよかったです。

1.フレーバー 強弱だけでなく、質。また漠然とではなく、具体的な風味特性をとらえる。

2.アフターテイスト コーヒーを飲みこんだ後、甘さで消えていくか、刺激として消えていくか

3.酸味→テイスティングの際は酸についてまずは強いか弱いかを考える。その後に質を探る。良いか悪いか。さらに、どんなふうに良いかを確定。いかに明るさを持つか(個人的には結構鬼門、この評価基準だとパインアップルのほうがみかんより評価が高い可能性になりかねないため。実際には酸の質やその表現する果実の具体性によると思うのですが、ここは難しい印象です。)

4.マウスフィール 量感、強さに惑わされず、質感、触感的な心地よさ

5.クリーンカップ 汚れ テロワールがでてくるか→液体

色が味(キャラクター)だとして、カップに汚れがある場合、本来の味を探るのが困難になる。

もしかしたら同じキャラクターを持っているかもしれないが、左のカッピングではクリーンさが足りず、本来の味を感知するのが難しい。また、ここまで上からにごりが混じってしまうと濁りしか感知できない可能性すらある。

6.甘さ・チェリーの熟度によるもの 均一性 ただ甘いだけでなく、どんな風に甘いか。

7.ハーモニー 調和がとれているのか

8.Overall 奥行き

味覚の強さではなく、基本的には質的な美しさや素晴らしさを評価する。いずれのケースでもカッパーの好みや個人的な好き嫌いで点数を与えてはいけない。

カッピングフォームのスコアについて

カッピングフォームの点数と関係する評価は以下のとおり(これを客観性を持ちつつ、各カップに点数をつけるのかということになります)。これに加えて、基礎点として36点を足してトータル点数を出すこととなります(この36点は基礎点(定数)で、スペシャルティコーヒーであれば内包されているだろうという点数です。また、1人のカッパーは一つのサンプル当たり4カップ評価することになりますが、これに欠点・瑕疵があった場合減算することになりますが、ここでは割愛):

点数/評価仮訳平均加算した場合
8 :great outstanding著しく際立つものがある100
7 :excellent素晴らしい92
6 :fine(欠点らしい欠点がなく)良い84
5 :good良い76
4 :ordinally一般的68
3 :poor貧相な60
2 :bad悪い52
1 :unacceptable受け入れられない44
0 :not present 36
会場では英語の説明のみで、日本語は軽く触れるのみだったので、一応つけときました。6点以上は0.5刻み

カッピングの手順

図はイメージです。だいぶ前に家で行っていたものです。

カップに10gの中粗挽きのコーヒー粉を入れておく。このカップを満杯まで淹れると180gとなります。

4分たったら、スプーンを下につくまで進め、4回掬い上げる(攪拌)。会場ではこのような流れになりましたが、あくまで目的はカップ評価委の同一性を確保するため。主催者によっては3回の攪拌、もしくは攪拌しないようにということもあると補足も行っていました。

その後、表面の膜を取り除き、カッピング評価へ。最初は全体的な印象、そのあとで詳細評価を。漠然と味を探ろうとすると拾えないこともあるため、目的をもって行う。個別評価を行い、温度変化を踏まえた評価も追記。さらに必要に応じて相対評価を行います。

ちなみに味を把握しても、得てして忘れてしまうこともあるため、味を感じ取ったらすぐにカッピングフォームへ書き込む。また、姿勢や吸い込み方について軽んじられることもありますが、カッピングの条件を一緒にするためにも必要なこととのこと。

次のページで当日のカッピングで使われたコーヒー豆とどのような点数がついたかについて紹介したいと思います。

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