グアテマラコーヒー情報2025アップデート

先日、米国農務省(USDA)から最新版のグアテマラコーヒーレポート(リンク)が発表されました。このレポートは年に1-2回リリースされ、業界関係者を中心に広く読まれています。当サイトではこの情報をもとにグアテマラの統計情報等を整理しつつ、現地から吸い上げた情報を追加してコーヒー愛好家の皆さんに幅広く現状を認識して頂ければと思っています。

もちろん、この記事でグアテマラコーヒーのすべてを網羅するわけではありませんが、コーヒーショップやカフェスペースでの会話がより充実したものになったら良いなと思っています。疑問等ありましたら、下のコメント欄やSNSからご連絡ください。

USDAレポートのPoint

  • コーヒー生産は安定的に推移していて、生産量は微増予想
  • さび病耐性のあるハイブリッド品種の採用が進む
  • 引き続き小規模農家が産業の中心で、生産量も太宗を占める
  • ANACAFEは農家に対して技術指導、工程管理、ファイナンス等をしながら積極的にサポート

≪音声ファイルはこちら(Notebook LMで試験的に作成しています)≫

直近の生産状況概要

2024/25期の生産量は3.53百万 60kg bagsで、2023/24期の3.47百万 60kg bagsから微増。2025/26期は3.54百万 60kg bagsになることが見込まれます。

耕地面積は376千ヘクターで前年度からほぼ変わらず。国内に植えられているコーヒーノキは約18億本(収穫可能な木は約16億本)で、耕作面積のうち内98%がアラビカで残り2%がロブスタです。

上に述べたような生産量の継続的な微増が見込まれる背景として、さび病対策が順調に進んでいることがレポートにおいて指摘されています。2010年中頃にグアテマラ国内でさび病が発生、生産量に大きな打撃を与えました。この対策としてANACAFE*が主導して品種の植え替えを行った結果、現在ではグアテマラで育っているアラビカ種のうち30%程度がさび病耐性をもった品種となっています。

*ANACAFE(アナカフェ)は”Asociación Nacional del Café(グアテマラ全国コーヒー協会)”の略で1960年に国会によって承認されたコーヒー法に基づく民間企業の出資により設立された機関で、グアテマラのコーヒー生産者を代表し、国内外のプロモーションを行っています。

USDA Reportの説明にあるサビ耐性のある品種の合計値と上の数字は合いませんが、これは植樹されているものなのでイメージとしてとらえてください

上述データはICO,USDA Coffee Annual, ANACAFEの2025年年次報告から引用。

輸出量に関するデータ

生産量の増加と同様に輸出量も昨年に比べて2023/24期は微増(3.13百万バッグ)となっています。一方で輸出額については減少しています。これは為替の影響で輸出額のタイミングがドル高とかぶっていたため。直近のコーヒー取引価格/為替を考えると輸出額については今後増加することが見込まれていま24

主な輸出国

グアテマラにとってコーヒーは農産物のうち第2位の輸出産品**で、重要な外貨獲得手段となっています。

主な輸出国に大きな変動はありません。例年通り、米国が全体の4割(129万60kg-bags)を占め、カナダ(11% 36万60kg-bags)、日本(10% 31万60kg-bags)、ベルギー(8% 26万60kg-bags)となっています(例年だと日本とベルギーが2位もしくは3位なのですが、カナダへの輸出量が2023-24期は大幅に伸びました。カナダは近年高品質アラビカの輸入元として地理的に近い中南米に注目していて、特に高品質なアラビカを安定的に供給できるグアテマラに注目しています。

ANACAFEの年次報告書では、上の表に出てくる輸出国との関係は強固であるものの、今後の生産量増加を見込んで今までプロモーションが手薄だった中東などにも積極的に行っているとのことでした。

**2024年の輸出額、第1位の農産物はナッツ類(約16億ドル/10.9%)、第2位はニット(クロシェ)衣類及びアクセサリー(約14.8億ドル/10.2%)、第3位はコーヒー、茶、香辛料(約14.2億ドル/9.8%)、第4位は砂糖 等(約9.2億ドル/6.3%)。(出典はWorld Exports.Com”Guatemala’s Top 10 Exports”より(リンク))

ANACAFEの農家支援

2024年7月に農家支援の一環として『コーヒー農家として継続的に利益を得るためのガイド』を発行しました。本書には農家としてどのような管理をすれば、持続可能な農業経営ができるかについてまとめられていて約200ほどの農家を支援している団体を通じて、国内の農家に対して教育支援が行われました。

規模生産量(1キンタルパーチメント≒46kg)生産者生産性(1キンタルパーチメント≒46kg)
大規模2001≦35416
中規模201≦ <20013,63614
小規模<201121,19213
ANACAFE, 2025

この背策が実施された背景にはグアテマラにおけるコーヒー生産に従事している農家のうち97%が小規模農家である一方、その生産量は44%にとどまっていることがあります。小規模農家の耕作地が収穫難しい場所に偏在していることもありますが、それでも生産効率に改善余地があるとANACAFEは考え、この本には特に生産性向上のための具体的なコーヒーノキの栽培方法(最適な耕作密度、肥料、剪定等)等が書かれています。

また、農家のIOT化にも力を入れていて、自分の耕作地の収穫見込みが計算できるアプリや必要となる肥料等の情報がわかるアプリ等をリリースしました。

ANACAFEは独自に開発したアプリを各プラットフォームで公開しています

参考:Guatemalan Coffee: 2023-2024 Harvest Results

日本との関係

グアテマラの街の風景

グアテマラは日本にとって馴染みのあるコーヒー生産国です。2024年の輸入量は5位で、約32万 60kg bagsです。全輸入量(約6百万 60kg bags)に対して約5.3%***となっています。

グアテマラ産コーヒーはその品質の高さについて世界的な評価を受けています。実際、グアテマラ産コーヒー、特にウォッシュドは中南米らしい柑橘系酸味と甘みを持ち、とてもクリーンな印象のテロワールを有しています。そのため、コーヒーショップとしては中米のラインナップとしてホンジュラス、コスタリカととも店頭に並べる候補の一つになる人気のコーヒー産地です。

この人気を受け、日本に輸入されるグアテマラ産コーヒー豆は1kgあたり848円となっていて、コロンビア(790円)やホンジュラス(773円)よりも高く取引されています。

日本のコーヒー業界との関係も良好で多くのコーヒー関係者が現地を訪れたり、ANACAFEの職員も定期的に日本を訪れ業界関係者向けのプロモーションを行っています。特に日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)が開催するコーヒーのイベントでは毎年大きなブースを出展するとともにセミナー等を行い、グアテマラコーヒーの認知の拡大に努めています(SCAJ2024グアテマラセミナーについては↓の記事を参考にしてください)。

***データは全日本コーヒー協会より、輸入順はブラジル、ベトナム、コロンビア、エチオピアの順

最後に

世界においてグアテマラ産コーヒーの存在感が低下することは当面ないと思われます。一方で、世界的にグアテマラ産に限らず、コーヒーに対する需要は高まっていますし、グアテマラも新興国へのプロモーションに力を入れる方針だということを考えると、グアテマラ産コーヒーの取引価格はさらに高騰する可能性があります。そして、その影響を受けて日本への輸入量が減る可能性も十分にあり得ます。

それをどう思うかは個々人次第だと思いますが、もしあなたがグアテマラのコーヒーを飲みたいと思ったら様々な形で情報発信していくのが今後は重要かもしれません。そうすることによってそのニーズが関係者に認知されれば、輸入しようと思うロースターや商社が増えるでしょう。もしそのような発信がなければ他の国に代替されてしまうかもしれません。一度減った輸入量を取り戻すのは大変ですので、消費者としてどうするのがいいかこのタイミングで考えてみてください。

今回の記事でグアテマラがどういう位置づけにあるのか、少しでも認識が深まって頂けたならうれしく思います。当サイトでは引き続き各国のデータを更新してきますので、ご自身の好きなコーヒー生産国についてお待ちいただければ幸いです。

グアテマラの街の風景
最新情報をチェックしよう!