パナマスペシャルティコーヒー協会のインフューズドコーヒーに関する声明について

この記事については後日、情報を整理して編集する可能性があります。

statement from Specialty  Coffee Association of Panama
パナマスペシャルティコーヒー協会声明文英語バージョン(協会ホームページより)

2024年6月20日、パナマスペシャルティコーヒー協会(以下「SCAP」)はホームページでインフューズドコーヒーに関してBest of Panama(以下「BOP」)への出品を認めないこと、また元来のスペシャルティコーヒーとは区別して扱うべき、という声明を発表しました。

発表文の意訳は以下の通りです。あくまで意訳ですので必要に応じて声明(英/西併記)をSCAPのホームページまたはSNS等でご確認ください(リンク)。

Best of Panama 及び/またはパナマスペシャルティコーヒー協会はインフューズドコーヒーの受入拒否

コーヒー業界におけるパナマスペシャルティコーヒー協会の担ってきた歴史と役割、その中でもパナマゲイシャおよびコーヒーの財産を考慮すると、Best of Panamaのような大会において、パナマコーヒーの真のアイデンティティを維持することの重要性を強調せざるを得ない。

今年行われたBest of Panamaでは、4つのコーヒー豆に、自然界ではありえないような表現が確認された。それらには高い得点を得てコンテストで勝つことを意図して、添加物(foreign additives)が加えられたものと思われる。幸いにもジャッジはこれらの不正行為を即座に特定した。このような出来事にも関わらず、大会は成功裏に進められ、180ロットものパナマのユニークなテロワールのコーヒー特性を持つものに恵まれた。

コーヒー業界は比較的若く、多くの消費者は熱心に本来の風味を味わい、信頼してくれる。しかし、残念ながら市場には”co-fermented”または”thermal shock”といった不明朗な用語を用いて特産(専門)品と偽ったコーヒーが氾濫している。

ほかの国の生産者は時に透明性をもって、またはそうせずに、これらの(生産)方法を使うかもしれないが、Best of Panamaに参加し、SCAPのメンバーでもあるパナマの会員の懸命な仕事は、これらによって危険にさらされており、差し迫った問題となっている。

SCAの会員であり、コーヒー業界の先駆者として、我々は世界中の他の大会運営者に対して、消費者の食品の安全を担保し、世界中の異なるテロワールや品種の人為的な均一化を防ぐために、(我々のスタンスと)同様な姿勢をとることを強く求めたい。

我々は加工された、またはインフューズドコーヒーは、元来のスペシャルティコーヒーとは明確に区別し、別に分類される必要があると考えている。

Statement from J. Hunter Tedman, President of Specialty Coffee Association of Panama

色々とアグレッシブな内容の文章ではありますが、SCAPは声明文中にある通り、コファーメンテッド(co-fermented)及びサーマルショック(thermal shock)を用いたコーヒーについてBOPへの参加を認めないだけでなく、SCAPとしては少なくとも従来のスペシャルティコーヒーとしては扱わない旨、明確にしています。

日本ではインフューズドコーヒー、ここではコファーメンテッドコーヒー*と同意だと思われますが、これらはスペシャルティコーヒーを扱っているコーヒーショップを中心に認知されていると思います。

インフューズドコーヒーはコーヒー豆の精製時に他の果物や香草などを添加して発酵を進めることによってそれらのフレーバーをコーヒー豆に移すというものです(他にもワインやほかの飲み物で使われる酵母を使うなど、様々な手法や方法がありますが、ここではざっくり記します)。

*コファーメンテッドコーヒーについては後程改めて触れますが、文章内で明確な定義がなされておらずの大まかな表現になります。

有名なところではコロンビアやブラジルの先進的な農家が取り組んでいて、そのコーヒーが醸し出すいちごやライチ、パイナップルといったユニークなフレーバーには毎回驚かされます。

これらのコーヒーについて、日本でもスペシャルティコーヒーなのかそれとも加工品なのかという議論があることも事実です。ただ、多くのコーヒーショップでは情報開示しつつ、それらをスペシャルティコーヒーとして取り扱っているのが現状だと思います。

もう一つ例示されているサーマルショックについて、日本では必ずしも耳慣れない言葉かもしれません。

これはコーヒーチェリーを収穫した後に熱処理することによって、コーヒーチェリーの表面に存在する微生物の活動を停止(排除)させ、その後、発酵槽に入れる段階で異なる微生物を投入して精製(発酵)を進めるものです。

これを行うことによって、生産者は意図しない香りを排除して、好ましい香りがコーヒー豆から発生するようコントロールすることが出来ます。

ただ、このプロセスが生産者と商社、そしてロースター内で共有された場合でも、販売時にパッケージに情報を明示する慣習がない、また消費者がそこまで気にしないことが一般的なため、日本国内に限らず、世界的にも表立って議論される機会は少なく感じられます。

そのためこの議論の展開や結論によっては、国内でも無視できない影響があるかもしれません。

SCAPはこれらの手法に言及しながら、これらを受け入れないことを示しています(コンテストの豆がそうだったのかもしれませんが、声明からはわかりません)。ただ、これらの手法はあくまで例示にすぎません。もしかしたら、SCAPが受け入れないコーヒーの範囲は広がるかもしれませんので引き続き注目する必要があります。また、これらの具体的な手法についても定義がされていません。伝統的な精製もしくは発酵方法から少しでもいじることはだめなのか、それとも特定の範囲なら人が介入してもよいのかも不明です。ここもフォローすべき点だと思います。

後日、まとめようと思いますが、2023年に開催されたCup of Excellenceブラジル大会では伝統的なwet(washed)とdry(natural)の他に、Experimentalという枠を作ってその他の発酵プロセスを認めています(HP上では水以外の添加物は認めないと書かれています。一方で、SCAJで行われたCOEの講演ではコーヒー由来の添加物については認めるという発言があったやに記憶していますので、この辺は可能ならCOEに確認したいと思います)。

今回の声明からはそのような分類を少なくともBOPに設けることはせず、はっきり拒否するとしています。そういう意味では消費者間のみならず生産者間でも紛糾しそうな声明内容になっています。

いずれにせよ、SCAPは声明文であるようにすでに今回のBOPで何らかを添加したであろう出品ロット4つをすでに排除しました。そのため、このような攻撃的で論争を起こしかねない声明文を公開したのかもしれません(この声明文の妥当性や内容の透明性についても議論はあるようですが、ここでは取り上げることはしません)。

今後SCAPに期待されるのはSCAP/BOPとしてスペシャルティーコーヒーとして取り扱わない対象物の範囲の明確化、もしくはSCAPとしてのスペシャルティコーヒーの定義等を開示して主張の妥当性を示していくことだと思います(SCAPのHP上にはスペシャルティコーヒーに関する独自の定義を発見することはできませんでした)。

コーヒーの一消費者としては、関係する国/団体がこれらの議論をオープンな場で排外的にならず、発展的に行ってほしいと思います。

声明にある通り、間違いなくSCAPはコーヒー業界の発展に大きく貢献してきていますが、他国の生産者もそれに負けず劣らないくらい努力をしています。

このルール作りや立場の違いを明確化することによって、一方的に一部生産国/者の排除がなされる等は避けてほしいと思うばかりです。

なぜなら、多くの生産者や消費者がいることによってしか厳しいコーヒー業界の未来はなく、この議論も様々な意見を吸い上げ、コーヒー業界の発展や裾野が広がることに繋がればいいなと思います。

いずれにせよ、ある意味賽は投げられました。意訳にもある通り、この声明文では他の大会統括団体に呼び掛けているので、特に先進的な取り組みを行っている生産者が属するスペシャルティコーヒー協会はそれらの扱いをどうするかについてスタンスを明示する必要があると思われます(もちろん他協会が無視することもありえます)。

今後、これらの動きを追うとともに、関連諸団体の動きについても整理して記事にしていきたいと思います。ご興味のある方はしばしお待ちいただければ幸いです。

参考サイト:Best of Panama, Specialty Coffee Association of Panama, ALLIANCE FOR COFFEE EXCELLENCE, Fantine, BAN INFUSED COFFEE?|S.C.A.P. President’s Bold Claim

SCAP ホームページ
最新情報をチェックしよう!