内容
散策しているとき、どのように歩くかはその人の自由です。人の心の持ちようは自由です。季節折々の風景を楽しむ人、どこまでも続く道を楽しむ人、行きかう人々の表情を眺める人、建築物を楽しむ人もいれば、新しいカフェや街並みの変化にアンテナをはる人もいます。
本当に思い思いに楽しむことのできる散策。それはぜいたくなひと時だと思います。
今日ご紹介する本『散歩ノート』は著者であるt島さんなりの散策の楽しみ方を紹介しているものです。t島さんがノートを使い始めた目的は、野鳥の印象を書き留めて、あとで図鑑を調べて同定するためだったと言います。
そんな趣味を続けていく中、いつしか興味の対象物は野草や花、キノコ、虫、動物へと、野鳥以外にも広がっていったそう。この本では、その広がりに広がったt島さんの世界を知ることができます。
t島さんがどんなふうに風景をみているか、そしてどの景色を切り取っているか、本を通してのぞいてみませんか?そこには今まで気づけなかったこともあれば、何気に見過ごしてきたこともあるかもしれません。そして、それらに気づけば明日からの散策がさらに楽しいものになると思います。
感想
リトルプレスならではの良さ
この本は出版社を介さずにだされたリトルプレス、もしくはZINEと呼ばれる形態をとっています。多くのリトルプレスは、一般流通にのらない、少量販売だからこそ、中身も振り切っているものが多いようです。中身は様々。この本のように趣味の披露だったり、短編小説やエッセイだったり、あるいは自身のポートフォリオだったり、いずれも個性的です。
この本からもリトルプレス特有の自由さが節々から感じられることができます。
散策ルートや散歩の本でもなく、野鳥の本でもない、ましてやそれらのメリットを説く本でもありません。ゆるりとこんな風に散策しました、という感じ。もちろん、動植物に関して少なくないことを学べるでしょうけど、それを促している感じもない。ただ、こういうふうに私は楽しんでいるという感じ。
そういう本だから、身構えることなくじっくり読めるような気がします。週末にお茶とビスケットを準備して、日向ぼっこしながら雑誌感覚でこの本を読むなんて、最高のぜいたくじゃないかな、なんて本書の読了後に感じています。
少しだけ内容紹介(ZINEはとても薄いのでぜひご自身で)
まず最初に書かれているのは春の季節の散策について。新年度ということでどうやらt島さんも忙しいらしく、お休みの日にもやることが多いそう。ならばと『春の妖精たち (たくさんのふしぎ傑作集)』という本で予習して、限られた時間でのそと歩きを最大限に楽しむという。
その様子が書かれた文章の端々から楽しげな雰囲気が漏れています。
そして、実際に山を登っている様子について、当日描いたノートとともに教えてくれます。ノートには季節を移り替わりを示すような動植物、そして、その瞬間に咲き誇っている花々が描かれていました。
他のページも同様です。訪れる場所は公園だったり、山だったりと様々。それらの場所は時に名前が書かれたり、書かれてなかったりしますが、読者の方の中には、その絵が描かれた場所まで特定できるかもしれません。それはそれで面白いですよね。まぁ、それができずとも、自分なりの山の風景を思い描きながら、読むと楽しいんです。
ノートには、現地で観測したものを黒で、帰宅後に自宅で同定作業をする際に書き足した情報を赤で書かれています。たった2色で描かれたノートにもかかわらず、じっくり眺めていると色づいてくるように見えるし、アニメーションとして動き出しそうでした。また、赤字のコメントが当時の自分に対してメッセージや突っ込みをしてて、その光景も楽しげ。
さらに、動植物の絵とともに、同行者やたまたまいた人たちとの会話も差し込まれているのですが、これも見どころの一つ。大爆笑にはなりませんが、どの会話も、あぁー、ありそう、とか、くすっと笑みがこぼれるようなものばかりでした。
ということで家でじーっとすることが多くなりがちですが、心の中だけでも、この本とともにいろんなところに旅立ってみてはいかがでしょうか。そして、状況が改善したら、自分なりの『そと歩きノート』を作って外出してはいかがでしょう。
本の概要
- タイトル:そと歩きノート
- 著者:t島さやか(寺島さやか)
- 第1刷 :
- 備考:
関係サイト
- t島さやかさんtwitter:@tshima_syk
本屋B&Bのこと、そしてご自身で運営されているetc.bookshopのこと等をつぶやいているようです。たまに見られる鳥の写真や鳥の絵は、まるでこの本の続きのようでもありますのでご覧になってみてください。
次の一冊
みなさんは今日ご紹介したようなZINEやリトルプレス、同人誌ってご覧になりますでしょうか。以前は私もほとんど読みませんでした。ただ、本屋さん巡りをするようになって目に留まるようになり、ぼちぼち読む機会が増えていったんです。そして、今ではお店に並んでいると新しいものがないか確認しちゃうほどです。そして目新しいものやお店が推しているんだろうなというふうなものを手にとっては、書かれている熱量にあてられて買っちゃうこともしばしばです。
そう、ZINEのいいところはその本が著者の好意でできあがっていることではないでしょうか。多くは前向きで楽し気。だから、読んでいると楽しくなるし、読後は爽快感で包まれます。
ということで今回は次の本ではなく、次のZINEをご自身で探してみてはいかがでしょうか。
今日ご紹介するのは、そんなZINEを販売するセレクトショップ MOUNT ZINEで一冊購入してみてはいかがでしょうか。
でも、こんなご時世だから、店舗には行けないという方、ご安心ください。オンラインショップ(リンク)もあります(このお店以外にも多くのインディペンデントな書店でZINEを扱っていますので、まずはお気に入りの書店のHPチェックから始めるのもいいかもしれません)。
ZINEは薄いものが多いですよね。一般の書店においてあったとしても、壁や特別な棚に陳列されない限り、なかなか手に取ることはないかもしれません。でも、この店は商品すべてがZINEです。ZINEだけが展示しているからこそ見えてくる情報もあります。ZINEだけが目に付くからご自身のニーズにも気づけるかもしれません。
何となく殺伐とした空気間の中、みんなの好きに触れてみてはいかがでしょうか?
当サイト【Book and Cafe】では次の一冊に関する短い紹介文を募集しています。お返しは今のところ何もできませんが、ここにSNSアカウント等を記載した半署名記事をイメージしています。要は人の手によるアマゾンリコメンド機能みたいなものです。気になったかたはSNSや下のコメントもしくはお問い合わせ にご連絡頂けますと幸いです。
雑な閑話休題(雑感)
この本を購入したのは『絲-itoito(リンク)』さんででした。青空の下、所狭しと、でも一冊ずつ丁寧に展示された本の中にこの本もありました。中身をちらっとみて、楽しげな本だなぁと思い、購入。感想にも書きましたが、たくさんの幸せと刺激をもらえた本でした。
ちなみにこの本を販売してくれた『絲-itoito』さんはご夫婦で本に携わるお仕事をされていて、色んなところに出没されています。本きっかけでも、イベントきっかけでも、楽しい場になると思いますので機会があったら訪れてみてはいかがでしょう。
それにしても青空市はいいですね。特にシェアガーデンのような広々としたところだと財布のひももいつの間にか緩んでしまいました(笑)。実際、その日の予定はそれだけでなかったにもかかわらず、いろいろ買い込んでしまい、帰り道は結構しんどかったです。
今はそういう状況にありませんが、だからこそ、そういう思い出を大切にしながら、しっかり前向きに目の前のことをこなしていこうと思います。
本日も最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。