センサリー・サービスを提供するFlavor ActiVの2024/6/25付webinar共有

Flavor ActiVとは

FlavorActiVはイギリスに本社をおく企業で、食品や飲食業界向けにテイスタートレーニング、キャリブレーション、品質管理等を目的とした特定の欠陥またはポジティブフレーバーの香り、味、口当たりの化合物を作成し提供等を行っています。

もともとはビール会社向けにこれらのサービスを提供すべく設立されましたが、現在ではチョコレートや洋酒メーカー、その他多くのメーカー等にもサービスを提供しています。

コーヒー関連ではコーヒーの鑑定士(Qグレーダー)を育成する機関であるCoffee Quality Institute(CQI)と2021年9月に戦略的パートナーシップを締結。CQIが実施するトレーニング及びキャリブレーションプログラムについてFlavorActiVが提供するキットが組み込まれることになりました。

2024年7月時点でQグレーダー資格の認証および更新試験に際してこれらのキットを使ったトレーニングが必須となっています(ただし、7月時点では採点対象ではなく、あくまでトレーニングの一環として行われています)。

このようなサービスを提供しているFlavor ActiVが2024年6月25日にコーヒー関連の商品に興味ある層向けにウェビナーを行いましたので内容をシェアしたいと思います。なお、関連商品については日本の代理店であるAlpha MOS Japanを通じて購入することができますので必要に応じてチェックしてみてください(Flavor ActiVは日本向けの直接販売は行っていません)。

プレゼンテーション要旨

VimeoのHPでは本動画で使われたスライドもシェアされていますのでチェックしてみてください(リンク

当日はマーケッティングヘッドのTom Brown氏が冒頭部分とFlavorActiVの概要について説明し、グローバルセンサリー専門家のLeandro Fedele氏がセンサリーに関連する部分と、具体的な商品の使い方について説明を行いました。

冒頭の会社の説明は大まかには上述の通りなので割愛。

改めて主な事業領域は、製造管理および品質管理に関する基準(Good Manufacturing Products)に基づいたフレーバースタンダード商品の策定、テスター・キャリブレーション(品質管理者の味覚調整)、センサリー・トレーニング(味覚訓練)、センサリー器具の製造。CQIと締結したパートナーシップ契約には以下の内容が書かれていることにも触れました。

  • CQIはQグレーダーが一貫性と信頼性を持つことによって、コーヒー業界のリーダー的な役割を果たすためにも、センサリー・スタンダード(香味標準)を特定することが必要と考える
  • 世界的な食料と飲料ブランドの多くのセンサリーパートナーとなるべくFlavorActiVは設立
  • このパートナーシップは共通のセンサリー・スタンダードー一つの共通の言語によって語られることを担保するーによってコーヒーの品質評価がなされるよう注力

これらを踏まえながらFlavor ActiVは商品開発を進めているとのこと。

その後、プレゼンはフレーバーキット使用の前提となる五感や五味に関する基礎知識の説明に移ります(プレゼン8分頃~)。

Stone &Sidel 1993

以降、プレゼンターの口調は丁寧語で統一します。

私たちが提供している製品は品質を評価するために使われます。例えば、商品が適切な状態かどうか。言い換えれば、商品が正常な状態にあるか、または商品が期待すべき、もしくは望ましい状態にあるかをチェックするためです。

本日興味を持ってくれた参加者も味覚や嗅覚のトレーニングを行ってきたと思います。一方で、それらのトレーニングに基づく機能が正しく働いているかどうかについてもチェックする必要があります。それらは私たちが提供するサービスとでもあります。

human sense vision

人間は対象物を評価するにあたって五感を使いますが、最も大きい影響力を持つ感覚が視覚です。なぜなら対象物に対する最初のコンタクトは目を通して行われるからです。

例えば、映画館のスクリーンで繰り広げられる会話はスクリーンの中の登場人物の口から聞こえてくるものと認知して、スピーカーから聞こえてくるものとは認識しません。

これをコーヒーに当てはめると、生豆の状態で確認できるカビ豆や貝がら豆、ローストした後の欠点豆の存在や、ローストレベの情報をインプットした場合、期待される味が形成されます。そして、これら視覚から得られる情報だけで商品を選ぶことすらあります。それだけ重要な情報なのです。

嗅覚も重要な役割を果たしています。

特に種として生き抜くための危険物の認識するのにとても重要とされています。また、人間は10000もの異なるにおいをかぎ分けられて、物質によっては機械(クロマトグラフィー)よりも優れていることもあります。とりわけ、その匂いやアロマが記憶とリンクしたときによく働きます。

コーヒーに当てはめてもそうです。サンプルチェックやカッピングの際には嗅覚を通して多くの異常を判定するはずです。

human sense touch

次に触覚。これは必ずしも最初の二つと同程度ではなく、二次的な役割を果たしています。

コーヒーの場合、手による感覚ではなく、舌、口蓋、歯に触れた時の感覚となります。例えば、コーヒーを飲んでボディがある、クリーミーだ、といった表現が該当します。これは表層的(surface response)な反応を示しているといえます。

一方、深層的な反応(deep response)というものもあります。例えば、手や舌の筋肉の収縮などがそうです。私の手元に商品パッケージがあり、これを触ったときにスムースな手触りを感じられますが、この表現が、これにあたります。

コーヒーの場合はsurface responseの話に限定されるといっていいでしょう。deep surfaceは噛んだ際に感じられるクリスピーとかになりますが、コーヒーの場合、焙煎豆を噛んで感想を伝えることは一般的ではありませんので該当しません。

human sense hearing

次に聴覚です。触覚と同様に二次的な役割を果たします。ビールやソフトドリンクで炭酸を含んでいるもののボトルを封切るとき炭酸ガスがでていく音がしますが、これは誰もがしるところです。もし、この音がしなかった場合、飲み物に何らかの問題があると疑うべきでしょう。

そのため、ビール業界では新鮮さに関連する音ととも理解されています。

一方、ジュースが入った瓶や缶にこのような音が発生した場合、状況は異なります。この音がした場合、内部で何らかの汚染や発酵を疑う必要があるかもしれません。このように飲料でも聴覚は役立つ情報となりうるのです。

コーヒーについて当てはめてみると、焙煎時のクラック(ハゼ)がそうとも言えます。ローストプロセスから期待される味が確認できるか、評価の対象となるでしょう。

basic tastes

コーヒーを評価するにあたって大事なのが味覚です。味覚は、甘味、塩味、酸味、苦み、うまみで、王精されます。そしてこの五味に、においが加わって、認識されるのがフレーバー(香味)です。

どの飲み物にも何らかの味があります。例えば、ある飲み物の酸味はきつい、もしくは弱い、とか、このコーヒーは甘いとか、苦いとか、そしてその苦みは品種特性だとか、ローストプロセスからくるものなのか、もしくは収率(抽出)によるものなのか、その因果関係を特定することも重要です。

商品は基礎的な味に匂いが加わることによって、特定のキャラクターとなります。コーヒーにどのようなキャラクターがあって、それらがほかの飲み物とどう違うのかを理解することは非常に重要なことです。そして、この差異を理解することでコーヒーの本質に近づくでしょう。

コーヒーの評価にあたって、嗅覚、味覚は非常に大きな役割を果たしています。ドライアロマをかいだ時の評価と実際にカッピングした際の評価が異なることもあります。それはどの食品や飲料でも起こりうることなので問題ありません。

重要なのは基礎的な味に加えて、アロマ、マウスフィールが一緒になって香味を構成していることを認識することです。

皆さんがカッピングを行うとき、対の機能を働かすことになります。具体的にはスプーンを使い、口へ空気を押し込み、香りを嗅覚部位へと運ぶかと思います。これは非常に重要なことで、味覚と嗅覚が同時に感知していることとなるのです。そのため、味覚はいまいちの反応でも、香りに良い反応をすることもあるのです。つまり、人間の感覚においてにおいと味の相互作用が重要な役割を果たしているということです。

製品紹介

トレーニングキットの使用方法を紹介している動画(ウェビナーではより詳しく説明がなされました)

コーヒーの専門家は味を評価するにあたって、WCRのセンサリーレキシコンSCAのフレーバーホイールを参考にするはずです。しかしながら、ここで書かれている商品を手に入れることができないことがあります。例えば、私はしばらくブラジルに住んでいましたが、ドールの果物が手に入りずらい環境でした。また、ベリーの話を特定の国でしても、通じないことがあります。また、同一果物だった場合でも、品種や地域によって異なる味だった場合、評価基準がずれて、会話が成立しなくなってしまいます。

Flavor ActiVはこのような問題を解消すべく、様々な分野でカリブレーションキットを作成し、フレーバー基準を共同で作ってきました。

今回紹介するコーヒーフレーバースタンダードは

  • センサリートレーニングとカリブレーションテストを目的としたもの。
  • 食品と飲料のセンサリートレーニングのためのものであって、リファレンス・スタンダードを目的としたものではない。なぜならリファレンス・スタンダードにはISOのもと複雑な認証手続きが必要となるため。
  • 食品安全基準を超えて、薬品に求められる基準で作られている。
  • 粉末がカプセルに収められているー開封後、液体へー
  • 液体に入れた時、香りが注入されたときに、一定の香りがするように設計
  • 薬品レベルのブリスターパックで作られていて、長期保存にも耐える。
  • 英国で作られていて、GMPにも沿っている。GMPはISOや食品基準より高い安全性を誇る。
  • 基準を満たすための生産施設を建設
  • 外部監査も受けている
  • 職員は訓練され、製品に精通している。

これらを高い水準で満たしているのがFlavor ActiVの製品です。

バニラの解説スライド。一部はWCRの説明とのクロスリファレンスとなっていて非常にわかりやすかったです

コーヒーフレーバースタンダードは匂いを確認するのはもちろん、味わうこともできる点で非常に有用です。匂いと味の複合的な体験ができることによって利用者の記憶とリンクすることが期待されます。

参加してみての感想

価格は参考値で、コペンハーゲンで行われたWorld of Coffee 2024時に適用されたスペシャルオファーが適用されています。なお、日本の場合は最初に述べた通り代理店を通す必要がありますのでご留意ください。

CQIとパートナーシップを締結しているだけあって、内容はQグレーダーコースの一部を抜粋したような感じでした。特に五味に関する基礎的なレクチャーやフレーバースタンダードの香りの説明とそれらのコーヒーにおける原因に関する情報等は十分実践的な内容でした。そのためQグレーダーの講義のさわりだけでも学んでみたいという人にはこういうウェビナーも参考になるのではないかと思いました。

一方で、製品としてのフレーバースタンダードを一度試してみないと、何とも言えない気がしたのも事実です。フレーバースタンダードのキットはどれも高く、一番安いセットでも1万円以上します。Qグレーダーの資格認証試験や更新試験を最近受けた人はどんなものかわかると思いますが、これからなろうと思っている人やコーヒー好きの人がどの程度買うきっかけになるかは正直わからないところではありました。

トータルで見るとコーヒーに対する知識の整理や学習意欲が高まったので参加してよかったかなと思えました。

ちなみに2023年に開催されたSCAJ展示会には韓国からアロマキットを販売しているSCENTONE社がプロモーションのために訪れていて、実物を触る機会がありました。もしかしたらそんな機会がこのフレーバースタンダードにもあるのではないかと思います。そうでなくとも、何らかのプロモーションがあるかもしれないので、フレーバースタンダードに興味を持たれた方はSNSでFlavor ActiV(X account)、もしくは日本の代理店であるAlpha MOS社(X account)をフォローしてみてはいかがでしょう。また、Alpha MOS社はにおいに等に関することをブログで情報発信もしているので興味ある方はチェックしてみてはいかがでしょうか(においも味も色いろ)。

当サイトでは今後もセンサリー・トレーニングやコーヒーに関する情報を扱っていきますので興味ある方はSNS等のフォローをよろしくお願いいたします。

参考:*Coffee Quality Institute to Incorporate Flavor ActiV Sensory Solutions by Daily Coffee News, Flavor ActiV HP, Coffee Quality Institute (JP), Sensory Lexicon (WCR), Coffee Flavor Wheel (SCA), Good Manufacturing Practices by WHO

flavoractiv webpage
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