SCAJ2025期間中にあったグアテマラのANACAFEが行ったセミナー「グアテマラコーヒーの革新性~変化するグローバル市場で競争力を維持する鍵~」についてまとめました。
当日の雰囲気も感じてもらうために本文はスピーカーの文章をそのまま書き起こしました。会場の雰囲気が読者の皆様に届けば嬉しく思います。

ANACAFEの紹介
私たちは1960年に民間資金によって設立されたコーヒー協会 ANACAFEを代表してSCAJ2025に来日しています。ANACAFEのミッションは主に次の4つです。
- グアテマラのコーヒー産業を代弁
- グアテマラのコーヒーに関する政策を発展・実行する
- グアテマラのコーヒー生産者に各種サービスを提供
- 世界におけるグアテマラのコーヒーのポジション確立
これらを通じて国内のコーヒー生産者の利益を最大化に尽力しています。ただし、私たちはコーヒーの輸出や買い付けを行っている機関ではないことを認識ください。
グアテマラには12万5千のコーヒー生産農家が存在します。そしてコーヒー耕作地が37.6万haあります。行政区で表すと261/340の地域で栽培され、国土の3.5%でコーヒー生産が行われていることになります。コーヒー産業は国内で最大50万の雇用を生み、生産者組織の実に41%は女性で構成されています。
そして、2018年には国の無形文化遺産として登録されるまでになりました。
200qq(9072kg(1qq=100ポンド≒43kg))のパーチメントしか生産していない小規模農家が全体の96.81%を占めています。一方で小規模農家は生産量割合にすると44%しか占めていません。
私たちは小規模農家に対しては共同体(COOP)等を作ってもらい、輸出業者等から買いたたかれないようサポートしています。そして、このことによって公平な競争が実現できるよな環境も作り出しています。
2025年6月までの数値では、国の輸出農作物の中で1位、12.1%を占めています。グアテマラ経済にとってコーヒーは最大の外貨獲得手段となっています。アメリカが最大の輸出先で52%、次いでヨーロッパが25%、日本(10%)を含むアジアが20%を占めています。
日本のマーケットを少し分析すると興味深いことがわかります。輸出対象となっているコーヒー豆のほとんどがSHB(strictly hard beans、最高格付けの豆)です。そのため、日本が高品質なコーヒー豆を重視していることがわかります。2024/25は収穫期があと数日で終わることから、日本への輸出量は前年並みとなりそうです。ただ、全体の傾向としては減少傾向にあります(輸入量は10年前の約半分程度)
少し見方を変えて、金額ベース(米ドル)となると多少のばらつきがあります。本来は金額と輸入量は相関する傾向にありますが、為替の影響もあり、今年は去年から大幅に増えています。
いずれにせよ日本の輸出量の減少についてはANACAFEとしても分析している最中です。
グアテマラコーヒーの革新的な取り組みについて
グアテマラコーヒー生産が将来にわたって成長し続けるために、ANACAFEは戦略的なイニシアチブを二つのことを通して行っています。
1つ目は戦略的なイニシアチブとしてアラビカ/ロブスタ種の生産性向上を推し進めています。2つ目にデジタルツールを開発し、生産者へ導入を促しています。
戦略的なイニシアチブは社会、経済、環境、すべての面で改善をしなければならないと考えています。つまり価格変動によらない力強い生産体制を作ることを意味します。
これを実現するために経るべきステップが3つあります。
まず農家の経済面を向上(回復)をサポートします(第1ステップ)。その後、農園や土地のリノベーションを行います(第2ステップ)。最終的には長期的な改革や技術革新の導入(第3ステップ)となります。そして、並行して生産者の方々に農家のマインドから起業家のマインドへと意識改革も行います。
ANACAFEはこれらをサポートするプログラムを農家向けに紹介しています。ただし、このプログラムに参画するにあたっては5つの項目について順守するよう要求しています。
それは種苗等の管理計画、精緻な肥料計画、病害虫に対する予防等管理の徹底、土壌や周辺植物等の周辺管理、そしてシェードツリー等の環境整備等です。
各段階で農学的なアプローチを行い、全体最適へと落とし込むことになりますが、例えば高い生産効率のアラビカコーヒーシステムでは灌漑整備も重要となります。
そして、その前提となるのは適切な栽培品種であり、きちんと管理された種苗となります。それらの厳格な管理をされた品種にしか真に適切な灌漑システムは構築することができません(栽培品種によって最適な水量や肥料は異なるため)。一方、適切な灌漑システムを導入できれば、収穫のタイミングがコントロールできるだけなく、植え替えやカットバックのタイミングも管理できます。もちろん、土壌管理や一部機械化もでき、より高度な農園デザインを構築できます。
ちなみにこのプランでは0-6か月でよい根のはりつきや葉っぱの広がりを管理し、7-18か月目で根を生育とともに木が適切な形で育っているかを確認、その後収穫のピークを意識しながらライフサイクルを回していくことになります。
実践的なアプリによるコーヒー生産管理
ESTIMAというアプリは上に述べたコーヒーの生産管理を助けるツールの一つです。農園の基礎的なデータを打ち込めば、最適な肥料や殺虫剤の量を導き出して、どの程度の管理費が発生するかを知ることができます。かつては、区画当たりにどの程度の肥料を投入してよいか判断できず、過不足が発生するだけでなく、結果として過去には赤字になってしまうこともありました。
これを使えば、その年のInput、つまり収支管理を適切に把握し、見える化がい実現できるようになります。これは先の第1ステップへと繋がります。つまり、生産者が現況を把握することによって第1ステップである経済的な回復が実現できるのです。
一方、PROYECTAというツールは開花等の情報を入力することで収穫量が予想できます。つまりOutputがわかり、売上から逆算することで投入できる管理費予算を導き出せるようになります。
入力するデータは生育している木の数、生産可能な枝木情報数と量等の基礎データや開花のタイミングとなります。これらを入力すれば、売上が判明します。
本日、会場で試飲してもらっているコーヒーはこれらの項目を複数年コミットしつつ、生産したコーヒー農園のものです。El Vergelは2年、La Pilaは3年、この枠組みで生産しています。いずれも甘く、クリーンな味わいを楽しめると思います。これらのプログラムに参加した成果といえるでしょう。
そして、消費国のみなさまにはCOFFEE SEARCH SYSTEMを紹介したいと思います。これはコーヒー生産者と消費者を結びつけ、お互いの交流を促進するものです。今までは仲介者を通してしか、交流はなかったかもしれませんが、これで直接交流できることができます。このツールを介してコーヒー豆の売買を行う等はできませんが、このツールがファンコミュニティとなり、さらなる2国間の交流の礎となればと思っています。
私たちは今後も品質の高いグアテマラコーヒーを日本へ届けたいと考えています。
所感
毎年、グアテマラコーヒーのセミナーには魅せられます。最新情報を組み込みながら、消費国でのファン作りのプロモーションもちゃっかりやるのはうまいなと思います。今回プロモーションされたアプリは今後もアップデートを繰り返し、消費国ニーズがより反映されるようになるそうです。そこには自分のニーズ等も反映されるかもしれません。そのため、このタイミングでDLしてみるのも面白いかもしれません。
私自身もこのアプリに限らず、ANACAFE等が取り組んでいるグアテマラコーヒーの技術革新についてフォローして情報発信に努めたいと思います。

































