プレミアムビーンズコース(ハワイ コナ)
今回参加したのはプレミアムビーンズコースの“ハワイコナスペシャルコース”です。ハワイコナのコーヒー豆は単品だと高額で正直買うか迷うところだったのですが、スクールがあったおかげで購入を決めました。
ちなみに今回のコナコーヒー豆は150gで4630+税で、トータル5000円です。改めてプレミアムな価格設定だと感じられます。ただ、品評会で高評価を得た豆や超有名な農園の豆はこれ以上のものもあるし、有名どころでいえば、需給の関係でインドネシアのコピ・ルアクとかタイのブラックアイボリーも高いですよね。また、日本で古くから親しまれているブルーマウンテンのNo1の100%ものはだいぶ高くなってきた気がします。
さて、他のコーヒー豆の高さをアピールして、ハワイコナはそんな高くないでしょうという主張はこれくらいにしておきます。
今回のスクールではコーヒー豆、コーヒー飲み比べ、+ケーキが含まれていました。そして、個人的には、この人が講師だろうなという前提で申し込んでいるので、信頼感がありました。今回のコースに限らず、コーヒースクールは内容や特典も大事ですが、どういう人が話をしてくれるかというのも重要だと思います。もし少しでも講師を知れる機会があるのなら、参加前に知っておくことは重要だと思います。講師をされる方は間違いなく一定の水準をクリアしているでしょうが、どうしてもその人との相性というものがあると思いますので。
次の章からセミナー当日の流れを紹介していきます。
セミナー当日の流れ
私が参加したのは新宿住友ビル店で4/12(月)18:00~に開催されたコマでした(予約をしたのは4/4(日)))。
講師は前回同様に新宿住友ビル店の店長氏家さんです(話術も知識も安定感のある一推しの方です)。
開始する前に感染症予防対策で参加者の対象管理に関するアンケートの実施及び講師と参加者のマスク着用をお願いする旨の丁寧な説明がありました。ちなみにこの日の参加者は合計3名。
いつもどおり、ウェルカムドリンクが出され、スクールが始まります。今回はお店で出していたタリーズのフレンチローストブレンド。深い焙煎とどっしりしたボディ感は落ち着く午後を演出してくれるいっぱいです。
ウェルカムドリンクを少し味わって再びマスクをすると、講師の方が自己紹介と今日の流れをざっと説明してくれます。まず、コナコーヒーの味がどのように異なるかをタリーズのレギュラーメニューと飲み比べ、その後にアリアナ農園やコナコーヒーに関する紹介をしていくとのこと。
カッピングで際立つ各々の個性
まず最初に行われたカッピング。今回、コナコーヒーのカッピングの比較対象として選ばれた豆はブラジルとフレンチローストブレンドでした。どちらも本日のコーヒーとして提供されるコーヒーです。
まずはコーヒーを豆の状態から粉の状態へ。この時点で香りをかぐことを指示されます。粉にした直後が一番香りが立ちます。焙煎の深さもありますが、ハワイコナからはほかのものに比べてフルーティーな香り、もしくは花のような香りが強く感じられます。
その後、150CC入るコップに10gの粗びきコーヒー粉を入れ、100℃のお湯でカップなみなみにします。この時点で再びアロマをかぎ、3分後にコーヒーをブレイク(器にあるクレマにスプーンを入れ、コーヒーを静かに攪拌します)して3回ほど混ぜながら、再び香りを確認。そしていよいよ味を確認します。その際は熱い状態と冷めてから何度でも味わいます。各温度で本当に味が違います。特にハワイコナの場合、熱い状態でもさわやかな酸と甘みを感じられますが、冷めるにつれ、酸が強調されていきます。
このカッピングで時間をたっぷり割き、その後参加者に感想を促されました。講師の方はいずれの意見にも肯定的で、とても和気あいあいとした雰囲気も生まれました。そして、そんな雰囲気のもと、セミナーはハワイ産コーヒーの特徴とアリアナ農園に関する説明へと移ります。
アリアナファームについて
アリアナ農園は正式名称を”Arianna Farms ‘Ono Kona Coffee”といいます。ハワイ島コナ地区ファラライ火山のスロープにある農園で、アリアナはご子息の名前からつけられています。そして、Onoはハワイ語でおいしいを意味します。50エーカーの土地でコーヒー豆を栽培し、自農園内で生豆まで精製できる設備を保有しているとのこと。
ちなみにハワイコナは東西3.4km、南北34kmの非常に狭い地域をさします*。
今回担当された氏家さんはタリーズの優秀バリスタが参加できる研修でアリアナ農園を訪れたことがあったそうで、その際に撮影した動画もみせてくれました。動画からは海にちかく、コーヒー畑がとても整備されている様子がよく伝わってきました。しかも、とても気持ちよさそう。少し脱線しますが、こういう感じでOB訪問をするのも面白いかもしれませんね。もちろん、タリーズに就職しようとする人たちはスタッフ経験者も多くいらっしゃるでしょうが、こういう接点からというのを理由にするのも具体的で強みがあるんじゃないかなと、少し思ってしまいました。
さて、再びアリアナファームについて。アリアナファームはコナコーヒーフェスティバルで過去4度の優勝歴をもち、その他のコンテストでもよく名前を連ねる優良農園です。自社農園で精製工程を行う能力を持ち、継続的な関係を持っているところにしか、豆を卸してないようです。タリーズは2013年ごろから取引関係にあって、その後、継続して豆を仕入れているとのことでした(なお、一部の豆は自身で焙煎していて、それらは全量米国向けとなっています)。
*ハワイ産コーヒーの地域名称については全ページで紹介しているカテゴリ区分を定めるレギュレーション(Standards for coffee)に”Kona coffee”はState of Hawaii Tax Mapで定められる北及び南Kona地区で栽培されるコーヒー豆で、少なくともプライムを満たすものと定められています。
今回のコーヒー豆用の特別な抽出方法
今回の抽出はなるべく素早く行いたいため、通常のタリーズでは使わない円錐形のドリッパー(Hario V60など)を推奨していました。通常、タリーズでは粗挽きのコーヒー粉10gを100℃ぎりぎりで150cc抽出しているとのことでしたが、今回は25g、すこし粗目の粒度で300gを抽出目標にするとのこと(3人いたため、このような分量になっています)。その際に蒸らしのためのファーストドリップは86℃、抽出用のお湯については83℃で抽出してくれました。意図するところはえぐみや苦みの抽出を可能な限り避け、きれいな酸味を演出することにあるそうです。
実際に飲んでみると花の蜜のような味とともに、クリーンな酸味が感じられました。ただ、この温度を上げたり下げたりしてどこまで変わるかといったら、そこまでだと思います。ただ、こういう演出をしてくれるだけでもスペシャルな感じがしてうれしくなっちゃいますよね。演出は重要です。
そして、今回一緒にだしてくれたのがみかんのミモザケーキです。ケーキにもともとある酸味と甘み、それにコナコーヒーの上品な酸味がお互いに引き立ててくれます。ケーキはよりマイルドになり、コーヒーはさらに奥行きのある味へとなりました。ちなみにこのケーキ、もっと深い焙煎のものと飲むとコーヒーは甘いチョコのように、そしてケーキもオレンジピールの入ったホットショコラのようになって、それはそれで美味しいです。色んな一面をみせてくれるのでそういうのも面白いなと思わせますね。
そんな和気あいあいとした感じで余韻を残しつつ、この日のセミナーは終わりました。毎回思いますが、セミナーって参加するまではドキドキしてハードルも高いのですが、いざ参加してみると、あっという間に時はすぎますし、多くの場合参加してよかったなと思えるものばかりです。
次の章ではそんな豆を家で試した時の話をすこしだけ。
自宅でもう一つのコナコーヒーと飲み比べ
項目 | Tully’s Coffee | 某ロースタリー |
農園名 | Arianna Farms ‘Ono Kona Coffee | Hawaiian Queen kona coffee farm |
住所 | 96725 USHIHolualoa Mamalahoa Hwy | Wai’ono Meadows |
標高 | 約400~600m | 約540~610m |
ホームページ | https://ariannafarms.com/ | https://www.hawaiianqueencoffee.com/ |
品種 | ティピカ | ティピカ |
製法 | ウォッシュド | ウォッシュド |
品質 | - (基本的にはエキストラファンシー基準に合致していると思われるものの大きさに少しばらつきあるかも、また一部欠損豆とチャフあり) | エキストラファンシー |
豆(20g) | 100粒(8つのかけたもの。トータル2g以下) | 108粒 |
焙煎度 | ミディアム~シティ | シティ |
PH(29.0℃)カッピング PH(27.9℃)ドリップ | 4.85 4.76 | 5.19 5.15 |
Brix(27.0℃)カッピング Brix(27.8℃)ドリップ | 1.09 1.88 | 1.10 1.29 |
アロマ、フレーバー | 早熟なオレンジのような酸味のあるさわやかな味。サトウキビや花の蜜の香りも。 | オレンジのよう。濃厚。そして黒糖やナッツのような香りも。 |
味、ボディ、クリーンネス | オレンジ。冷めるとグレープフルーツに近づく。ボディはそこまで感じられないものの、ざらつき等は感じられない。 | 熟したマンダリンやオレンジのような印象。十分なボディ感がある。 |
総評 | サードウェイブコーヒーの時流に合わせた味の特長を持っていた。ティピカの特長はそこまでかも。ただし、ハワイコーヒーの表現の幅広さと可能性を感じられる。 | ティピカらしい昔ながらのコーヒーという感じ。強烈な個性はないものの、何杯でも飲みたくなるコーヒー。 |
ここでは名前を伏せていますが、今回比較した豆を焙煎しているお店は個人的にとてもお世話になっているところです。このお店はとても丁寧なお店で、優良な豆を仕入れ、きちんとハンドピックしたうえで焙煎しています。その様子は上の写真からも確認できると思います。豆を数える際の欠点豆のなさ、それ以上に均一な豆に改めて驚きました。
さて、上手のような簡易的な比較表を作ってみましたが、ハワイコナでも農園や焙煎具合でだいぶ異なるキャラクターを引き出せる印象を受けました。これは農場の場所によるのか、それとも精製工程から生まれるものなのか、それとも焙煎の違いからくるものなのか、たぶん各々が作用していると思われますが、だとするとハワイコナの印象って意外と画一的ではないのかなと思ったりしています。ちなみに最近ではハワイコナをナチュラル製法で仕上げているものもあるようで、さらに味の幅がでてきているようです。それらはまだ日本に入ってきているのかわかりませんが、機会があったら探してみたいと思います。本当、どういう味になんでしょう。
今期のハワイコナセミナーはもう終わってしまいましたが、タリーズでは継続的に行われているセミナーですので来期も行われると思います。本記事で少しでも興味を持っていただけた方は、次回以降参加していただけると嬉しいなと思います。そうすれば、ハワイと日本のコーヒーファンのつながりはいつまでも日本のコーヒーファンがはまた違う味が楽しめると思います。
わたしもこっそりどっかの会場で参加していると思います。
コーヒーのトレンドをタリーズの公開情報から考える
おうちコーヒーが充実する時代
さて、タイトルの通り、タリーズについて面白そうな資料があったので紹介しておきたいと思います。一つ目は2021年のコロナ禍で在宅ワークが多くなり、家ナカ需要が伸び、タリーズコーヒーもコーヒー豆の売り上げを伸ばしているそうです。
私自身も喫茶店やカフェを訪れる機会は去年に比べて著しく減った中、家で飲むコーヒーの量も少なから増えた気がします。世間的にもそうなんだとこの記事で改めて感じられました。
コーヒーチェーンの垂直統合へ
もう一つは伊藤園が2015年に買収したコーヒー豆調達・販売の会社に関する項目です。タリーズジャパンはだいぶ前からアメリカのタリーズからは独立した運営を行っているのは既知のことではあると思いますが、生豆の調達についても専門性を高めていたのは知りませんでした。しかも、この買収した会社は中南米に農園まで持っていたので、川上から川下まで完備したこととなります。もちろん、タリーズのような大規模の会社だとこの会社が持っていた豆だけでカバーできるわけではないでしょうが、ノウハウを蓄積しながら、横軸展開できるのは面白く、興味深い展開に感じられました。
ちなみに、伊藤園のIR情報をを調べていて、タリーズに割かれているページが少なく感じられたのが少し寂しいなと思ってしまいました。伊藤園にとってはお茶に関する事業があくまで軸でしょうからしょうがないわけですが。。。もちろん、それを差し引いてもタリーズが目を離せない事業であることは間違いないと思います。今後も独自の道を行くタリーズコーヒージャパンに注目していきたいと思います。
本日も最後までお読みいただきましてありがとうございました。また別の記事でお会いできることを楽しみにしています。
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