【本紹介・感想】簡単にコーヒーがおいしく飲めるようになる『世界一美味しいコーヒーの淹れ方』

【内容】

本書は2014年にワールド・バリスタ・チャンピオンに輝いた井崎英典さんがコーヒーの淹れ方について簡潔にまとめたものです。

冒頭、タイトルとなっている”世界一美味しい”を「自分が本当に美味しいと感じられる自分好みの最高の1杯」と定義して、その実現にむけて注意すべき点や必要となるテクニックを余すところなく教えてくれています。目的を絞っているため、コーヒーノウハウ本にありがちな沢山の情報はなく、かつ、とてもわかりやすい表現で書かれています。

様々な国や地域のコーヒーが流通するようになり、多くの焙煎店がしのぎを削る今日だからこそ、自分にとって最高のコーヒーとは何なのか、コーヒー業界の流行に振り回されることなく、考えてみるきっかけとなる一冊だと思います。

おうち時間が多くなったことによってコーヒーにはまった人にはもちろん、いつかコーヒーを自分で入れてみたいという方にもおすすめの一冊です。

ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方

ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方井崎 英典ダイヤモンド社2019-12-19

【内容・感想】

上の紹介文で書いた通り、とても読みやすい本です。まず、最初にここでいう「世界一」とは何なのか。そして、その尺度となる自分にとっての「美味しい」を読者に定義してもらうところから始めています。もう、これだけでこの著者のことが好きになってしまいます。だって、そうじゃないですか、自分の好みをみんなに押し付けることをせず、読者各々に好きなコーヒーがあるはずだって、それをきちんとわかりやすく伝えてくれるんですから。この本を嫌いになることなんてありえません。

さて、少し興奮気味にまくし立ててしまいましたが、ざっと内容を触れていきたいと思います。

改めてになりますが、本書は書店で多く見られるコーヒーの教科書や辞典本とは少し異なります。コーヒーの知識全般を得たいのなら、この本ではなく、そういう本を購入した方がよいと思います。ただ、自分好みの一杯を淹れられるようになりたい、そういう想いで本を買うなら、この本で間違いないと思います。

この本では、まず自分がどんな本を好きなのか、把握しようというところから始まります。苦いか・酸っぱいか、そしてその他、コーヒーで一般的に使われる表現であるキレ・コク・すっきり・まろやか・バランスを各々言葉にしてカテゴリーを作ります。大まかに把握できたら、次にそれらがどの産地に多く見られるか、情報を整理していきます。その過程でコーヒーの情報に関する透明性やトレーサビリティの話も自然と織り交ぜてきます。

なるべく硬くならないよう、嫌みならないよう、だって読者は美味しいコーヒーを飲みたいのだから。それがわかっているから、豆知識風にいれつつ、それでいてそれらが味にも関係していくことを指摘します。

そして、話はどんどん核心へ。今までのことを整理しつつ、その他、品種、標高、そして生産処理が生み出す個性や特長について触れていきます。一度でもコーヒー本を手に取ったことのある人には聞き馴染んだ話かもしれませんが、普段は意識されてない方も多いのではないかと思います。

その後、今度は私たちの身近、もしくは自身で行う加工について。焙煎度合いだったり、コーヒー豆の粒度だったり、器具もその用途について教えてくれます。

最終的にはプロのバリスタがどのようなことに気を使って抽出しているか、科学的な側面も含めて教えてくれます。普段何気なく飲んでいるコーヒーですが、プロのバリスタはここまで考えてレシピ作りをしているんだと再認識させてくれる本です。

もちろん家庭でコーヒーを楽しむ際は取り入れられること、取り入れられないこと、あると思います。ただ、そういうエッセンスをしっておくと格段に自分の好みのコーヒーに近づいてくるんではと思います。

ということで、「世界一」を標榜する本の内容・わかりやすさは伊達じゃないなと思う一冊でした。

本の概要

  • タイトル:ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える世界一美味しいコーヒーの淹れ方
  • 著者:井崎 英典
  • 発行:ダイヤモンド社
  • 装幀:井上新八
  • 本文デザイン・DTP:二宮匡(ニクスインク
  • 撮影:京嶋良太
  • 校正:鷗来堂
  • 製作進行:ダイヤモンド・グラフィック社
  • 印刷/製本:勇進印刷
  • 編集:市川有人
  • 第1刷 :2019年12月18日
  • ISBN978-4-478-10956-4 C0077
  • 備考:とてもよく構成された本だと思います。目的と読者のターゲットがしっかりとされていて、無駄な情報がほとんどない。しかもそれを体現するかのごとく、丁寧な装幀や中身となっていました。また、そのためかもしれませんが、こういうノウハウ本には珍しく、読後の爽快感を感じられました。

関係サイト

オフィシャルサイトでは井崎さんの直近の活動等が確認できます。またSNS等へのリンクもありますので興味がある方はぜひご覧になってみてください。

次の一冊

世界一のバリスタが書いた コーヒー1年生の本

世界一のバリスタが書いた コーヒー1年生の本井崎 英典宝島社2021-11-17

井崎さんはこの後にもコーヒーのエントリー本を上梓されています。今回ご紹介した本は美味しいコーヒーを淹れるにはどうすればいいのかというポイントに絞ったものでした。そのため、必要ない枝葉ははぶいています。

一方、『世界一のバリスタが書いた コーヒー1年生の本』は幅広くコーヒーについて知っていると、よりコーヒーを楽しめるんじゃないかという観点のものです。内容は”コーヒー一年生”と標榜しているだけあってかなり柔らかいものになっています。イラスト多めで本人もかわいらしいイラストになっています。美味しいコーヒーを淹れることでコーヒーが身近に感じたら、この本でコーヒーライフを一層楽しんでみてはいかがでしょうか。

雑な閑話休題(雑感)

本は中身こそ大事!

コーヒー@カリタ

この本の存在は販売当初から知っていたのですが、「世界一」という文言がネックになって敬遠していたんです。

本書の中でも指摘していますが、味覚は各個人によってバラバラです。それは個人の食体験や生活環境が大きくかかわるからです。日本の喫茶店文化の中でも深煎りが良い人もいれば、アメリカンのような比較的薄めの味を好んで飲む人もいます。

また歴史を遡ってみれば、江戸時代末期、オランダの出島でコーヒーを飲んだ人はその苦さにびっくりした記録も残っています。歴史を経れば、人間の嗜好も変わるいい例だと思います。

だからこそ、万人に共通の「世界一」美味しいというフレーズに身構えてしまいました。

ただ、中身を読み進めると、冒頭から「世界一」に関する誤解を丁寧に解説しているんですから、やられたと思うばかりです。

そういう意味で、タイトルはあくまでマーケティングやあおり目的ということを再認識しつつ、『?』と思った本でも、何か引っかかりがあれば、少なくとも店頭では手にとって、ウェブではできる限り試読をしてみたいと思います。まぁ、個人的には実際にそれから購入に至るケースが多いわけですから。そういうことを痛感した一冊でした。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いできるのを楽しみにしています。

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