【本紹介・感想】インテリが本気を出すと変人的行動にしかみえない?『ゼロからトースターを作ってみた結果』

トースターはできたけど、、、

『トースタープロジェクト』のギャラリー展示の様子@Dublin

トーマスは結局15万円ほどの材料費をつぎ込んで、たった一台のトースターを作ることに成功します。交通や付随する費用を考えれば、もっと費用は掛かっているとのこと。

そんなトーマスはこの制作過程を通じて、やはりこんなにも多くの原材料を必要とするトースターが500円で買え、少し痛んだら新しいものに買い換えるシステムに対して疑問を抱きます。そして様々な鉱物等を産出して国々、ロシア、チリ等で発生している問題を想起させながら、私たちはもっとそれらに注意すべき必要があるのではないかとも訴えます。

安心してください。我らのトーマスは大上段に何かをぶちまけようとはしていません。

ただ、例えば説明書を二つつけ、後生大事に扱う、とか。商品棚を見るときにはその背景を考えたうえで選択をする必要があるかもとか、の主張に留めています。

もちろん彼自身は今回の体験を踏まえて環境税等に前向きな姿勢を示していますが、読者に決して多くを求めていません。それは彼自身がコンピューターギークであり、コスパの良い買い物を好きだから、自身も含めてエキセントリックな行動をとることがいかに難しいことを知っているのです。ただ、未来に希望をもたないといけないとは、といっています。

また、トーマスは今回、一人で作り上げる決意をしながらも、周りの多くの善意ある人々がいなかったことに触れ、人々が支えあいながら生きていることについて気づき、その重要性も説いています。

そしてトーマスが今回負ったコストに見えない負担のように、世界のだれかが負担を追っていることについて理解しようとも言っています。

いずれの物言いも控えめだけど、トーマスの譲れないたちどころにたった訴えでした。それは一読者である私でさえ、日常の生活を改めて考えさせられるものでした。我が家は比較的物持ちが良い方だと思いますそれでも生活を改めて見直し、少しずつできるところからできればと思いますし、隣と比較してうんたらかんたら、と思ってしまったら本作を思い出してみようと考えました。

本の概要

  • 著者:トーマス・トウェイツ
  • 訳者:村井理子
  • 発行:株式会社新潮社
  • 印刷・製本:錦明印刷株式会社
  • 備考:本書は2012年、飛鳥新社より『ゼロからトースターを作ってみた』として刊行。
関連サイト

ホームページで読者の中で話題となっているいくつかの事項について回答しています。彼のユーモラスだけど、実直なコメントは面白いですよ(わかんなかったら、google先生に翻訳頼んじゃえ)

次の一冊

本書の中(P34)で、イギリスが荒廃した後、仮にトーストを作ることになったら、みたいな仮定でストーリーを語っているところがあります。それが面白そうと思ったら、ルイス・ダートネルの本を読んでみませんか?果てしない再構築の過程が追えます。


当サイト【Book and Cafe】では次の一冊に関する短い紹介文を募集しています。お返しは今のところ何もできませんが、ここにSNSアカウント等を記載した半署名記事をイメージしています。要は人の手によるアマゾンリコメンド機能みたいなものです。気になったかたはSNSや下のコメントもしくはお問い合わせ にご連絡頂けますと幸いです。

雑な閑話休題(雑感)

TEDでトースタープロジェクトについて講演したトーマス。原稿はTEDのサイトにありますのでそちらもチェックしてみてください。

 今回ご紹介したトースタープロジェクトは、プロジェクト途中からメディアの注目を集めたといいます。実際、彼はブログで経過報告することによって人を巻き込みつつ、トースターが作りやすい環境を作っていったようです。ただ、終盤では資金面で少し難しい状況を迎えていたことがわかります。

 もし、今日彼が同様のプロジェクトをすることになって、途中経過について同様に各メディアを通して人々の注目を集めることができたら、クラウドファンディング等でいくらでも資金調達ができそうですよね。

 もちろん、賢い彼であればよりよい方法でプロジェクトを成功させるかもしれませんが・・・。

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