(2)コーヒーのプロセッシングについて
まず、コーヒーのプロセッシングとは”チェリーから生豆”になるまでと定義をしたうえで、そのプロセスを一つずつ確認していきます。基本的には熟して、欠点のないコーヒーチェリーを収穫して各工程を経ることが望ましいのですが、それは困難です。そのため、望ましくないコーヒーチェリー(軽い、虫食い、カビ、変形 等)を各工程を経ることで取り除いていきます。
図4の上のほうから、手摘みの場合、ピッカーは基本的には目視で選別しますが、機械での収穫の場合、場所(上段のほうが熟している等)を指定して収穫します(機械も進化しているので良いものであれば、ある程度熟度をそろえることができるようになっています)。そのことによってまずは未熟豆の混入を防ぎますが、ある程度は混入してしまいます。そのうえで、虫食いやカビ、過熟豆等の混入は必ずしも防ぐことはできません。
そのため、パルパー(種皮をとる機械)に流す際に水流比重選別機を用いて選別します。この際、水面に浮いてしまう軽いものは何らかの瑕疵があります。例えば、過熟して果肉と種の間に空間ができていたり、また虫食いだったりすることもあります(1)。
パルピングしても種皮がとれないもの、つまり種皮が固い未熟豆になりますが、これはグリーンセパレーターで排除されます(2)。
そして再度水流選別され、選抜を行い、過熟豆や不完全な豆を徹底的に排除します(3)。
その後パーチメントの乾燥へうつりますが、この際にも種皮がついているものや不完全なパーチメントが混入していることがあり、この段階でもこれらを排除する努力がなされます(4)。
その後、これらのチェックをかいくぐったものがスペシャルティコーヒーとして輸出されることとなります。今回は(1)~(4)(上の図のイメージだと*(アステリスク)の数と対象)が午後に行われたカッピング対象となっています。ただ、(1)~(4)のコーヒー豆は廃棄するわけではなく、国内市場だったり、廉価版のコーヒー豆、またはインスタントコーヒーの材料となるとのことでした。
この過程については動画や写真を交えながら説明がありました。今回、それらの写真は撮りませんでしたが、撮影されている方もいらっしゃったので禁止されているわけではないと思います。
ここではコーヒー豆買い付けを行っているCafe Importの動画を紹介しておきます。なお、Washed もNaturalもセミナーで使われていた機械のほうがこの動画のものよりも大規模なものを使っていました。
ただ、この動画でもスクリーニングをかけて欠点豆を除外していこうという生産者やプロセッシング業者の意図は十分に感じられるものとなっています(なお、youtubeにとべば、ほかの精製工程(ハニーやアナエロビック等)もみられるので興味ある方は飛んでみてください。設定で翻訳機能を使えば日本語字幕も付きます)。
カッピングセッション(午後)
2回のカッピングを実施。
1回目
84以上 | 83-78 | 77-73 | 72-68 | 67以下 | 講師陣 | |
①浮いたチェリー | Citric, Brown Sugar(1) | Nutty(-), Sweet, not clean(3) | Unclean, Astringent(2) | Not Clean, Flat, wheat(3) | 80前後 | |
②Pulpingされなかった チェリー | Smooth(1) | Floral, Berry, Rich, Red Currant, (5) | ferment(-), Phenolic (3) | 76以下 | ||
③比重の軽いParchment | Citrus, Brown Sugar(1) | Grape, AC, Orange, Cereal(3) | 濁り, dry, grain, flat (4) | rough(1) | 80前後 | |
④African Bedで ピックされたParchment | Dusty, Earthy(1) | Cereal(2) | Dusty, Earthy, wheat, grain, phenolic(6) | 68以下 | ||
⑤Heavy Parchment | Honey, Grape, Tea-like, Orange, Syrupy, Nuts(4) | Sweet, Round, Well Balanced(3) | mandarin, floral(2) | 84超 |
1回目は精製工程ではじかれたもの4つと最終選別まで進んだ1つのものを比較しました。協力してくれたのはNicaraguaの Nueva Segovia(地域名)Finca Casa Blanca(農園名)です。品種はカツーラ。ちなみに上述の通り、多くの参加者が最終段階まで進んだコーヒー豆を評価しているので、どこかで見かけたら試してみてください。農園主さんも喜ぶと思います。
私自身も含めたカップ評価は上の表の通りです。なお、スコアリングはSCAJ方式で行っています。
なお、個人的な所感は以下の通りです。(1)はキャラクターが弱く、アフターも短い。あとマウスフィールにザラつきあり。ただ、そこまで悪くもない印象でした。(2)はドライアロマの段階で少しだけ薬品臭がしました。他は(1)と似たような印象。(3)は個人的には悪くないと思ったカップ。グラッシーな印象、ただし少しシリアルやストローな感じがありました。(4)はドライアロマの段階でネガティブなダスティー、マッディ、アーシー、等がドライアロマに出ていました。一方で、飲んでみると(1)~(3)よりは甘みは感じ取れました。ただ、如何せん全体としてはクリーンさに欠ける印象を持ちました。最後、完成品(5)は甘みもシトラスとハニーな感じもきちんと感じられました。特に鼻に抜けるフレーバーは長く残り、プロセッシングの重要性を感じられる一品でした。また、(1)〜(4)にはあったアフターの収れん味のある渋みも抑えられているのも印象的でした。
2回目
84以上 | 80~83 | 79~76 | 76以下 | 講師陣評価 | |
Brazil Passeio Bourbon Natural | chocolate, nut, cacao floral, citrus | unclean, cereal | 81~2 | ||
Brazil Passeio Bourbon Pulped Natural | nutty , citric, round, smooth, almond | flat, | 84~5 | ||
Ethiopia Konga Natural | Pineapple, orange, | tropical fruit, peach, | fermented | 84~5 | |
Ethiopia Knoga washed | orange, syrupy | orange, jasmine, smooth | 85~6 |
各プロセッシングの特徴をとらえようということで、4つのサンプルをカッピング。1回目同様に参加者の評価は上の表のとおりです。
加えて、私自身の印象は次の通りです。(1)はブラジルナチュラルは典型的な味でした。いわゆる80少し超えるスペシャルティーコーヒー。ただ個人的にはもう少しクリーンさがほしいかな、という印象。ただし、酸味抑え目でフレーバーは感じられます。(2)これが個人的には講師陣評価と別れたちゃいました。マウスフィールはラウンドになってよかったのですが、ドライアロマに少しだけ薬品臭を感じて、それを減点対象にしちゃいました(ただ、サンプルのばらつきはあるのかもしれません)。講師陣の点数は非常に高得点でよいコーヒー豆のようでした。
(3)は少し発酵感を含んだ華やかなナチュラル。パインやシトラスを感じられましたが、一つ一つの印象は少し少しだけぼけていたかも。(4)はきれいなウッシュド。ジャスミンの香りにオレンジといったフレーバー。華やかさは少し抑え目だけど、一つ一つのの果物を明確に感じられる一品でした。
全体の感想
関根さんから説明があったように、コーヒー農家の協力を得て、このような貴重な機会に参加できたのは幸運だと思えました。そして、生産者や精製業者がこんなにも努力してコーヒーの品質向上に尽力していることを改めて実感できたのもよかったと思います。
プロセッシング自体はコーヒーのどの教科書にものっていますが、必ずしも身についていない分野だと思います。特にコーヒー業界に身に置かない人にとってはぼんやりとした理解にとどまっているのではないでしょうか。
今回のセミナーではそのぼんやりした知識がよりきちんと理解できたと思いますし、それがカッピング体験という忘れがたい経験値にもなりました。
個人的に特によかったのはカッピング時に収れ味のある渋みやアフターのざらざら感が完成品以外のすべての商品から感じられたことでした。もちろん、その差は工程によって異なるのですが、これがディフェクト(欠点豆)からくる味だというのをよく感じられたのは収穫でした。
一方で、上にも書きましたが、最終段階までいったコーヒー豆があまりにもクリーンでキャラクターが際立っていたことは驚きでした。もちろん、方向性については各段階で感じられましたが、それでもここまで豊かになっているというのは、各プロセッシングに関わっている方々に改めて感謝の念を抱けるようになりました。
関根さん曰く、このセミナーは農家の協力が得られる限り、続けていきたいという話でした。私もプロセッシングの座学とカッピングが結びついた、非常に有意義なセミナーだと思いますので来年以降参加できる方はぜひ参加してほしいと心から思います。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。また次回の記事でお会いできることを楽しみにしています。
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