SCAJ ジュニアローストマスター資格認証講座参加報告

3/12(火)に日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)主催で開催されたSCAJジュニアローストマスター資格認証講座に参加してきましたので、内容をシェアしたいと思います。本講座は開催回数が少ないので、この記録が参加検討されている方の参考になれば幸いです。

SCAJジュニアローストマスター講座の目的と概要

この講座はコーヒーのロースティングについての基礎知識、技術を習得し、原料生豆の素材を引きだせるローストができることを目的としています。

また、この講座は商業焙煎をする方、開業希望者、コーヒー関連の仕事をする方、焙煎に興味のある方等、幅広い方々に対応したプログラムです。

当日は焙煎に関する広範な座学講義と実技講習を行った後、筆記と実技の試験を行い、この両方の試験に合格するとジュニア ローストマスターの資格を得る事が出来ます(なお、このジュニアローストマスターに合格することでアドバンスド・コーヒーマイスターの選択式実技科目である実習講座:”焙煎”を取得したこととなります)。

開催概要

開催日2024年3月12日(火) 9:30~17:30 (9:00受付開始)
会 場ワタル株式会社 東京本社
〒105-0003 東京都港区西新橋2-11-9    ( アクセス)
募集定員20名 (最少催行人員:8名) 
受講料28,600円(講義料含む)
セミナー内容
スケジュール
9:00~9:20受 付
9:30~12:00座学講義
・「コーヒーマイスターテキスト」、「当日配布テキスト」を使用
・焙煎実技講習(安全確認や焙煎機の基礎的な知識や操作法)
・カッピング講習(試験に向けた説明と実技)
12:00~13:00昼休み
13:00~17:00・筆記試験(初級レベル)
・カッピングの実技試験(SCAJスコアシート記入、初級レベル)
・焙煎機を使った実技試験(IKAWAを使用した焙煎)*
17:00~17:30終了(スケジュールの進行状況により延長する可能性があります。)
受講資格➀SCAJ会員である事、
➁コーヒーマイスター有資格者(有効な認定書を所持されている方)である事
※本講座はアドバンスドコーヒーマイスター実習講座、”焙煎”を兼ねます。
持ち物コーヒーマイスターテキスト、 筆記用具、 エプロン、カッピングスプーン
(※カッピングスプーンは当日販売(¥2,000)。
受付期間2024年2月13日(火)20:00 ~ 2024年3月3日(日)午後23:59 
*HPではIKAWAを使用する旨、告知がありましたが、実際にはプロバットを使用しました。

当日の流れ

当日の詳細なスケジュールはホワイトボードの通りです。ジュニアロースター講座参加者は4つのグループ(A・B・C・D)に分かれることとなります(ホワイトボードにある”中”は中級の意味。当日はサーティファイド・ローストマスターセミナー(中級)資格認定講座受講の方と座学のみ一緒でした)。

1グループ、6~8人程度で構成され、カッピングやロースティングの際に一緒に講義を受けることとなります(今回のセミナーは自身でも焙煎しているか、もしくは焙煎に興味を持っている方が多いのでタイミングをみつけてほかの参加者の方にも挨拶、会話することをお勧めします。そのことによって焙煎やお店の営業等、様々なことについて意見交換ができるはず)。

講義(座学)

ジュニアローストマスター資格テキスト等
当日はコーヒーマイスターテキストも持っていくこととなりますので、該当箇所だけ抜き出しておくといいと思います。

冒頭、ローストマスターズ委員会の方から挨拶と当日の流れに関する説明があります。その後、授業へ移ります。授業ではまずSCAJのミッションを確認。その中でローストマスターズ委員会の位置づけの説明がなされます(SCAJのミッションなどについてはコーヒーマイスター資格取得している方にとっては復習となりますが、この辺もテストの対象ですので気を抜かないようにしてください)。

その目的をざっくりいうと、スペシャルティコーヒーの風味特性をカップの中に再現するために高度な焙煎技術が必要となり、そのために技術の向上のために切磋琢磨し、情報交換の場を設けていく、そのためにローストマスターズ委員会が設立されたということです。

その後、コーヒーマイスターテキストと当日配布された資料に基づいて説明が続きます。基本的にはコーヒーマイスターテキストの”焙煎”のチャプターに書かれている内容がベースとなりつつ、より詳細、かつ実践的な内容となっています。

例えば、最初のほうでは、焙煎においてコントロールできるものを主に①火力、②熱風量、③ドラム回転数(等)、として各々をコントロールすることでどういう結果が期待できるか、や各機械(ドラム式、パドル式、ボウル式、ジェットゾーン)等がどういうった機械でどのような特徴があるか、などです。

さらに焙煎に影響を与える外的な要因に関するもの、例えば、外気温、湿度、焙煎機の設置場所、排気方法などを例示しながら、これらを記録し、焙煎結果と突合し、改善を重ねていくことによって各々の理想の焙煎が実現できると指摘してくれます。

また、講義では焙煎の進行具合を①水抜き(投入から約3分)、②メイラード反応(約5分)、③カラメル化(約6~7分)、④炭化(約8~10分)の4段階に分けて、各々のステージでどういうことが期待できるか説明があります。

あと、ざっくりではありますが、焙煎曲線の読み方、記録すべき項目について触れます。ただし、この辺はあくまで概論という感じでした。

最後に、焙煎した豆は適切にカッピングして、記録を残すことの重要性を指摘していました。当然のことなのですが、これを行わないと次の焙煎をどうやって改善していくかわかりません。

その際にはどのような特性をカップの中で再現したいのか、自身で理解・意識している必要があり、そのためにもカッピングができる必要があることを説いてくれます。

なお、座学のテストは焙煎の手順だったり、安全回り、メンテナンス、火災対応について、等、自身が現場でどう対応すべきかについても問われます(テストは選択式で持ち込み不可です)。ただ、内容は極めて常識的なものが多く、テキストを一読していれば大丈夫だと思います。時間は1時間与えられますが、時間いっぱい使うことはないと思います。

その後、A・BグループとC・Dグループに分かれて実践編へと移行します。

カッピング

グループごとにカッピングについて簡単な説明があります(冒頭、テクニカルスタンダード委員の方からカッピングセミナーへの参加したことがあるかについて問われ、挙手したのは2/8でした。そのため、カッピングの経験の有無は気にしなくてよいかと思います。ただし、経験があると楽なので、事前にSCAJのセミナーもしくは近所のカッピングセミナーにでも参加しておくとよいかなと思います(また、こだわりたければSCAのフレーバーホイールの単語を覚えておくのも役に立ちます)。なお、SCAJのカッピングセミナーについては<初級>、<中級>、<実践>を参考にしてみてください)。

委員からは今回の試験で重要なのはカッピングフォームを正しく記入できることとの説明があります。そのため、書き漏れがありそうなところ(eg サンプルNO、名前、日付、ローストカラー、確定した点数に丸と付けること、アロマについては強弱と質を評価すること、等)を念入りに説明されます。

カッピングのスコアリングについて網羅的な説明はありますが、カッピングセミナーではないのでカップに関する詳細な表現などについての説明は省かれます(カッピング自体、説明を含めて一時間なのでそんな時間がありません)

ただ、当日カッピングにでてくるのは4種類。いずれも同一のコーヒー豆を使用したとのこと。違いは以下の通りです。

サンプル特徴点数
①4分間で焙煎したものアフターに渋みがでていてクリーンではない80前後
②2ハゼ焙煎したもの焦げ、ロースト臭あり80未満
③23分間、低温焙煎したものナッツ感あり、個性が弱い80未満
④9分30秒、適切な焙煎ベリーや柑橘系のきれいな酸がある80以上

①については香りはとても良く、レモンのような強い酸を感じられますが、その後に酸っぱさ・渋みがあり、クリーンではありませんでした。コーヒー豆の芯まで火が入っていないときに感じられるものですが、一方で浅煎りの店ではたまに出会うコーヒーです。許容するかはお客さん次第ですが、ここではアンダーデベロップとしていました。

②焦げ臭とともに強い苦味が感じられます。酸味もありますが、どうしても焦げ臭が感じられ、高い評価をつけにくいもの。ただ、こちらも一部の喫茶店では出会うことがあるコーヒーです。苦いと思いながら飲むか、ミルクを淹れるとおいしいかも。

③長時間焙煎したため、角が取れているかんじ。酸はほぼ感じられなくなり、チョコレーティだったり、ナッティな印象。欠点はあまり感じられないので、個人的にはまぁ、いいのではと思います(前提として高い豆でなければ・・・ですが)。

④ドライでベリーの香りがでて、カップではベリーの香りに加え、オレンジの酸も感じられました。そのうえで長い余韻を楽しめるカップ。

上述のように焙煎度の違いがよくわかるようなカッピングとなります。ちなみに委員の方が何度も説明・私的してくれますが、これはSCAJのカッピングフォームに基づいてスコアリングした結果です。

コーヒーは嗜好品ですので個人の好みがあってしかるべきです。また、この味を目指して焙煎をしたのなら、それはそれということとなります。ただ、試験は個々人の好みではなく、SCAJ基準で評価ができるか、否かですのでご注意ください。

午後のテストでも概ね似たようなコーヒー豆となっていますので、ここで味の特徴を覚えて、午後に備えましょう。委員の方もたくさん手伝ってくれるので疑問に思ったことは早めに解消したほうが良いと思います。

焙煎実技

sample roaster
画像はPROBAT社HPより引用。生産国のオークションやカッピングコンテストでよく使われている焙煎機です。

概要のところにも書きましたが、IKAWAのサンプルロースターではなく、PROBATのもので100g焙煎します(ちなみに中級はPROBATの1kg焙煎機で500g焙煎していました)。講義ではテスト対策として焙煎する様子を見せてくれます。ただ、初級に関しては焙煎そのものより、心構えだったり、安全確認が中心です。

つまり、電源コードが入っていないか、ガス栓が適切に入っているか、周辺に燃えそうなものがないか、食品である生豆をきちんと取り扱っているか(軽量も含む)、1ハゼ、デベロップメントタイム、取り出しについて記録できているか等、が気を付ける項目です。

本来のテストではサンプル豆があって、それと同等の豆を仕上げるのが目標ではあるのですが、初級では委員の方がある程度サポートしてくれます。なお、テストで焙煎したコーヒー豆は持ち帰ることができます(これからもわかるように参加者はみな真剣ではありますが、和やかな雰囲気で受講できます。)

ちなみにテストでは焙煎作業とともに用紙が配布されて、焙煎に関する情報を穴埋めすることを求められますので、自身で各情報(各温度、焙煎時間、デベロップメントタイム、焙煎終了時間等)を記入していくこととなりますので、うっかり情報を書き漏らさないようにしましょう。

全体を振り返って

一日をフルに使った講義でしたが、より多くの人に参加してほしいと思える講義でした。残念ながら、現状は関東、関西各々年に1回ずつなので、参加のハードルがかなり高いです。ただ、参加者の意識は高いですし、委員の方々はご自身のお店で焙煎経験のある方ばかりです。その方々に逐次質問できたり、サポートを願ったりできるのは非常に貴重で、そこで得た知見は家やお店に戻っても役に立つものだと思います。

もしこれを読んで受講してみようと決心したなら、準備として日頃の焙煎で抱いている疑問点をたくさんストックしておくことをお勧めします。座学の内容とかぶったらそこで質問してもいいし、もしかぶらなかったら、時間をみつけて委員の方に聞いてみるといいでしょう。きっと可能な範囲で質問に答えてくれるでしょうし、できなかった場合でも何らかのヒントは得られると思います。

最後にテスト結果は概ね2週間以内に届くようです。ちなみに私には3/25(月)に届いていました。結果は合格。試験は筆記75点以上、実技(カッピング)70点以上の絶対評価で、各平均点ともに非常に高かったので多くの参加者は受かっていると思います。ことのことからも、資格認証講座と思わず、参加できる状況であれば、思い切って参加することをお勧めします。

最後までお読みいただきありがとうございました。また、次の記事でお会いできるのを楽しみにしております。

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