【本紹介・感想】コーヒーの入り口は色んな方法があっていいと思える『たぶん彼女は豆を挽く』

内容

本書は徳島にあるaalto coffee (アアルト コーヒー)のオーナーである庄野雄治さんが自身のコーヒーとの関わりあいを中心にまとめられたものです。

本書は大まかに2部構成でできています。前半(side A)は、コーヒーに関する四方山話から始まります。コーヒーの産地やコーヒーのみについて。そして、どんなことに気をつければコーヒーはよりおいしくのめるか等々。その後、アアルトコーヒーオープン当初からのお客さんであり、料理スタイリストとしても有名な堀井和子さんを向かえ、コーヒーの淹れ方について対談を交えながら披露していきます。プチ情報としてのおいしいアイスコーヒーや優しいカフェオレの作り方も教えてくれます。

前半を読めば、普段コーヒーを飲まない人もきっと自宅でコーヒーを淹れたくなるはずです。

後半(side B)では、庄野さんの今までの歩んできた道、庄野さんとアアルトコーヒーが大事にしているもの等についてエッセイ形式で綴っています。おしゃれなコーヒーパッケージや缶とは違い、飾り気のない文章で淡々と語られていますが、時に情熱的な文章が飛び込んできてはっとさせられることも。

庄野さんのコーヒーを飲んだことがある方にはもちろんお勧めの本には違いないのですが、飲んだことのない人にも、こんなロースターもいるんだと

たぶん彼女は豆を挽く

たぶん彼女は豆を挽く [文庫]庄野 雄治mille books2019-06-28

感想(ネタバレ注意)

庄野さんのコーヒー教室は楽しげ

Photo by Battlecreek Coffee Roasters on Unsplash

前半の部分は、特にコーヒーとの接し方が決まった人には読みにくいかもしれません。なぜなら、この部分はまだコーヒーとの接し方が定まっていない人向けの部分だから。そういう人に対して、コーヒーってこういう面白い側面があるんだよーとやさしく話しかけている部分なんです。それはまるでコーヒー教室のよう(もちろん、堀井さんと対談形式のコーヒー教室の章もあるんで当然なんですが・・・)。だから、この部分を読めば庄野流のコーヒーの淹れ方がわかると同時に、コーヒーを淹れたくなる。とにかくアアルトコーヒーのコーヒーでなくていいから、コーヒーファンを増やそうって感じ。

だから、コーヒーに関する本を何冊か読んでいたり、お気に入りのロースタリーがある方は、まず後半(side B)から読んでみるのもいいかも、なんて思います。

徳島のユニークなロースター、アアルトコーヒーについて

Photo by Battlecreek Coffee Roasters on Unsplash

後半(side B)はアアルトコーヒー、そして、庄野さんが心がけていることにいての章です。店頭に並べるコーヒー豆の廃棄までの時間、なぜ販売しているコーヒー豆の値段を統一しているのか、全国各地でコーヒー教室等を開催しているのにもかかわらず、徳島を拠点とし続けるのか等々。

いつしか話題は庄野さんの生活へと移っていきます。家族とのこと、執筆活動やブログのこと、そしてどういう人に対してコーヒー豆を届けようとしているか。

どれも短いエッセイではありますが、読み進めていくほどに、凝り固まったコーヒーに対する想いが氷解していくんではないでしょうか。

あっ、もっと自由でいいんだと。

嗜好品だけど、日常品のコーヒー。飲み方も淹れ方も人それぞれ。軸だけ持っていれば、いろんなことを楽しめるはずですから。

そして、そのあとにもう一度、前半(side B)のコーヒーの淹れ方やコーヒーに関する解説もすんなり入ってくるのではないかなと思います。

私自身は最初から読み進めましたが、後半を読むことで再度前半部分を読み直してみると、また違った風に感じることができました。

気軽に読み始められて、何となく新しいことをはじめてみたくなったり、日常を大切にしたいなと改めて思える、そういう本でした。

また、こういう本に出合えるといいな。

本について

本の概要

  • タイトル:たぶん彼女は豆を挽く
  • 著者:庄野雄治
  • 協力:赤木真弓、岩崎朋子、岩間洋介、長谷川ちえ、堀井和子
  • 解説:岩間洋介(moi)
  • イラストレーション:佐々木美穂
  • 編集・デザイン・写真:藤原康二
  • 発行所:mille books(ミルブックス)
  • 発売:サンクチュアリ出版
  • 印刷所:シナノ書籍印刷株式会社
  • 第1刷 :2019年7月7日
  • ISBN: 978-4-902744-96-5 C0077
  • 備考:本書は2010年6月に刊行された『たぶん彼女は豆を挽く』に書き下ろし原稿を加えて再編集したもの(巻末より) 

本書にかかわっているミルブックスからは庄野さんの作品以外にも多くのコーヒーや紅茶に関する本が出されています。この本を気になった方なら、ミルブックスの作品をローラーするのも面白いかも。

関係サイト

アアルトコーヒー オフィシャルHP:  http://aaltocoffee.com/

twitter:  @aaltocoffee

庄野さんが本書内でも触れられているデイリーで更新しているブログはお店のHPからとべます。また、ウェブ経由のコーヒー豆の購入についてもHP内に記載があります。遠方にお住みのかたは一度購入してみるのもよいかもしれません。ただ、都内でもいくつかのお店でアアルトコーヒーのコーヒー豆を購入することができますので一度調べてみるのもいいかもしれません(まとめられていたり、まとめてなかったりしています)。

次の一冊

今回は次の一冊はお休みして、コーヒーを淹れてみませんか?本の中で紹介されている器具を少しだけ貼っておきます。プラスチックのコーヒーフィルターはリーズナブルなのですが、紹介されているポットは少々値が張るので最初は身の回りにあるもので代用するのもありだと思います。それでいいなと思ったら、まずはお近くのコーヒー器具を扱っている販売店へ。このリンクから買う必要はありません(笑)。しっくりとした器具がいいと思うから。それでも庄野さんの味に近づきたいと思う人は購入すればいいかなと思います。

メリタ Melitta コーヒー ドリッパー 1~2杯用 メジャースプーン付 コーヒーフィルターシリーズ SF-M 1×1

メリタ Melitta コーヒー ドリッパー 1~2杯用 メジャースプーン付 コーヒーフィルターシリーズ SF-M 1×1 [ホーム&キッチン]Melitta (メリタ)

メリタ ペーパーフィルター 100枚入 ホワイト PA1×1G

メリタ ペーパーフィルター 100枚入 ホワイト PA1×1G [ホーム&キッチン]Melitta (メリタ)

いずれも1-2人用です。2-4のものを必要な場合はご注意ください。

タカヒロ コーヒードリップポット 0.9L 18-8ステンレス IH対応

タカヒロ コーヒードリップポット 0.9L 18-8ステンレス IH対応 [ホーム&キッチン]タカヒロ
タカヒロのドリップポットはIH非対応のものもありますし、0.9L以外のものもあるのでご注意ください。

ポーレックス コーヒーミル

ポーレックス コーヒーミル [ホーム&キッチン]ポーレックス

ミルはポーレックスのもの。堀井さんとのコーヒー教室ではマグ200mlに対して14gのコーヒー豆を使うということにしていましたので、ポーレックス コーヒーミルのミニでも大丈夫だと思いますが、、、先々を考えると標準サイズのほうがいいかな。でも、もっと安価なものもあるのでサイトをいろいろみてください。

ということでこれだけそろえたら、あとは一回コーヒーを淹れてみましょう。もちろん、上で書いたとおり一回目は色々代替してOKだとおもいます。とにかく一回淹れていいなと思ったら、その後買い揃えればいいと思います。

ということで今回はコーヒーを淹れてみては?という勧めでした。

雑な閑話休題(雑感)

だいぶ前に参加した都内で開催されたイベントで販売されていたアアルトコーヒーの豆と16gのお菓子。いずれもほっと一息つける味に仕上がっていました。

コーヒー焙煎に限らず、どの業界も成熟しているので事業を起こしてそこで生き抜いていくのは本当に大変な時代だと思います(もちろん、昔だって今とは違った大変さはあったんでしょうけど)。

庄野さんのコーヒーはそういう意味ではオンリーワンのほうに向かっているんだと思います。スペシャルティを標榜するわけでもなく、スタイリッシュさを売りにするわけでもなく、もちろんそれらがないというわけですが、それ以上に自身のライフスタイルや哲学のようなものがコーヒーに丁寧に表れているような気がします。

他の多くのロースターも想いをもって仕事をされているんでしょうが、ここまで実現するのは難しいですよね。そんな庄野さんの煎る豆だから、と購入する人も多いはず。これからもそういう人たちの期待を裏切らずに庄野さんは焙煎していくんだろうな、としみじみ思いました。


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