先日、米国農務省(USDA)から最新版のエルサルバドルのコーヒーレポート(リンク)が発表されました。この情報をもとにエルサルバドルのコーヒーに関する統計情報等を整理しましたのでこの記事でシェアします。
USDAレポートのPoint
- 耕作面積・生産・輸出ともに横ばい(中米を襲ったさび病から収量回復せず)
- コーヒーセクターに資金が集まらず、農家全体が厳しい環境で成長が限定的
- 気候変動、さび病対策、新木への植え替え等課題があるものの、農家の人的、財政的制約が多く、対応できていない
直近の生産状況概要

2023/24期の実績値は604千60kg bagsで、2024/25期は561千60kg bags、2025/26期は597千60kg bagsの生産量を見込んでいます。2024/25期に微減した理由は2024年12月の大雨(24時間で400mil)が原因としています。この雨は完熟期を迎えようとしていたエルサルバドルのコーヒーチェリーに大きな影響を及ぼし、品質・収穫量を低下させました。
今季は天候も良く、収穫量も回復する見込みです。なお、2012/13期の著しい収穫量の減少はさび病によるものです。
コーヒーの耕作地は横ばいと予想されています。これは政府の施策が十分ではないためです。本来であればエルサルバドルには多くのコーヒー耕作適地がありますが、それを十分に生かせていません。農家に開墾意欲があっても、地場銀行はコーヒー産業を利益率が低く、リスクの高いとみなして融資に積極的ではありません。
政府も無策なわけではなく、苗木等を配布して老木や病害虫に弱いコーヒーノキの植え替えを推奨していますが、植樹した後、育成して収穫までのつなぎ融資等がないため、苗木を適切に育てられないのが現状です。さらに支援対象となる農家も小規模もしくは零細農家に限定しており、中規模以上の農家は自主的に対応せねばならなく、産業全体が対応に苦慮している状況です。
そのため、生産効率も良くなく、1ヘクタール当たりの収穫量がせいぜい300kgにとどまっています。これはペルーの1ヘクタール当たりの生産量が500kg程度1に比べると相当に低い状況です。この原因として先述した生育環境を十分に保てていないためとされています。
加えて、農村部から都市部への若い世代の流出もコーヒーセクターの環境を厳しくしています。
輸出量に関するデータ

2024/25期は578千 60kg bags、2025/26期には583千60kg bagsの輸出になると見込んでいます。コーヒー価格の高騰に伴い、来期以降も微増を見込んでいますが、政府の農家に対する支援策が限定的なため、大幅な伸びは見込まれていません。
主な輸出国

他の中米の国同様、輸出量の約半分がアメリカ向けです。アメリカに次いで、ヨーロッパ向けが続きますが、日本も継続的にトップ10に入っています。
地元のNGOであるSalvanaturaは農家により高収入をもたらそうと各種認証制度の登録サポートを行っています。結果として、230農家と34精製施設がレインフォレストアライアンスの認証を受けています。その他の認証への登録も行われており、同時に地理的認証等も活発に活用され始めています。
また、エルサルバドルコーヒー協会(Asociación Cafetalera de El Salvador )は生産者のQグレーダーに力を入れていて、高付加価値のコーヒーができるよう支援しています。
日本との関係

財務省から発表された貿易統計では2024年のコーヒー輸入国全体の中で15位に位置し、中米の中では6位となっています。1kgあたり平均904円で取引されていて、高付加価値なコーヒー豆で有名なコスタリカに次ぐ価格となっていて、価格面では非常に検討しているといえます。
最後に
ホンジュラスやグアテマラが隣国にあるため、コーヒー生産国としては厳しい環境にありますが、かつてエルサルバドルは世界第4位2のコーヒー生産を誇っていました。
このことを踏まえるとポテンシャルは相当あるはずです。そしてそれを彷彿とさせるように近年いくつかの農園を中心に国際的にもその存在感が高まっています。
COE2024 Washed/Honey部門ではパカマラが5/8、Natural部門でも4/10を占めました。Geishaも複数入賞していますが、BourbonやSL28等も入っており、他国とは違う個性的なラインナップとなっています。そういう意味でも他とは違ったプロモーションも可能なのかもしれません。
日本への輸入量は必ずしも多くはありませんが、個性的かつ品種的に見てもお店で扱ってみるのも面白い国だと思います。
- 「北米・中南米地域広域・フード・バリューチェーン強化における本邦技術活用のための情報収集・確認調査ファイナル・レポート(2020年2月)」(JICA/株式会社パデコ)より試算 ↩︎
- El salvador by Sucafina(2025年8月20日確認) ↩︎