SCAJ2025セミナー報告『豊かな土壌が生むタンザニアコーヒー』

SCAJ2025期間中に在京タンザニア大使館主催で、タンザニア・コーヒー・ボードのFrank Joseph Nyarusi 氏(品質・プロモーション責任者)を招いて行われたセミナーについてまとめました。当日の雰囲気も感じてもらうために本文はスピーカーであるNyarusi氏の発言する形式でまとめていますので、その雰囲気を感じて頂ければと思います。

在京大使館からのご挨拶

セミナーは在京大使館のスピーチから始まりました。

SCAJには国の代表である大使館関係者が結構来場されます。それだけ国の基幹産業としてSCAJでのプロモーションを大切に思っているんでしょう。今回も在京大使館からEdna Dioniz Chuku参事官によるご挨拶がありました。

(Eduna Dioniz Chuku参事官)

4年前のSCAJで初めてタンザニアコーヒーセミナーカッピングを行い、それ以来継続的に実施してます。毎回多く参加者に恵まれ、嬉しく思っています。

タンザニアは有名な鉱物「タンザナイト」が産出される国です。また、多くの観光者が訪れます。

そしてコーヒーの生産地としても有名です。コーヒー生産にとって望ましい気候と肥沃な大地、そして農家の献身的な努力によって柑橘やベリー、スパイスなどの風味が楽しめ、それらが高度に調和されているのがタンザニア・コーヒーの特徴です。

今後もタンザニアと日本との交流がこのコーヒーをきっかけに深まることを期待しています。

タンザニアコーヒーの概要と歴史

Frank Joseph Nyarusi 氏(品質・プロモーション責任者)
Frank Joseph Nyarusi 氏(品質・プロモーション責任者), Tanzania Coffee Board

キリマンジャロや国立公園等の多くの観光名所がタンザニアにはあります。また、先ほど紹介があった「タンザナイト」をはじめ、多くの鉱物もとれます。

その多くの資源のうちコーヒー(タンザニアの農業GDPのうち約24%、2023/24のコーヒー収益は約2.5億USD)も重要な産品です。

インド洋のブルボン島(現在のレユニオン島)から、キリスト教イエズス会の宣教師(カトリックミッショナリー)によってもたらされました。また、ロブスタについては原産国の一つとして生産が行われています。アラビカは標高1000-2000m、ロブスタは標高800-900mの地域で栽培されています。

これらはダルエスサラーム港を中心に輸出されます。

小規模農家による生産90%を占め、フルウォッシュ/ナチュラル、いずれかの伝統的製法によるプロセッシングを行っています。

キゴマ等の北部を中心に3つの地域(16自治体)で生産されています。タンザニアはアフリカで第3位の生産国で、最大40万世帯(約240万人=人口の約6%)がコーヒー産業に関与しています。耕作面積は22万haで、アラビカとロブスタの生産量の割合は6:4です。年間では80-120万袋の生豆が生産されています。そのうち、34%が日本向けに輸出されています。

75%がいわゆる一般流通商品(コモデティ)で、25%がフェアトレードやオーガニック等の高付加価値なコーヒーとなっています。

タンザニアコーヒーの特徴と入手方法

タンザニアの国土の多くは火山性土壌で、標高も高いため、生産されるコーヒーも甘くフルーティーで、ベリー等のニュアンスがあります。そしてそれらの特徴がよいバランスを有しています。

調達方法は二つあります。

毎週木曜日に行われるオンラインオークションライセンスを持つ輸出業者から買う方法、そして農園等からの直接購入です。

私が所属するタンザニアコーヒーボードはこのコーヒー品質を担保すべく、AA、A等の格付や品質基準の策定を行っています。タンザニアコーヒーボードとしては今後もタンザニアのコーヒーが世界の消費者に届くよう努力を続けていきます。今後もタンザニアコーヒーに期待して頂ければと思います。

本日はタンザニアのコーヒーをいくつか持ってきているので楽しんでください(多くの参加者がカップクオリティを確認しながら、安定感のあるタンザニアコーヒーを楽しんでいました)。

タンザニアでコーヒー生産に取り組むOSTI

タンザニアでの事業紹介ということでOSTI GLOBALのタンザニア事業「TANJA」の紹介がありました。以下はOSTI GLOBAL、セールスマーケティングマネージャ白鳥さんからの説明です。

同社はタンザニアのンゴロンゴロ自然保護区に隣接する約1,760ha(千代田区の1.6倍の大きさ)の農園を引継ぎ、現在は2700ha、235tを超える生産となっています。また、日本人スタッフ3~4人で500人のローカルスタッフを抱えるほどです。

OSTIが持つ農園はバークフリーテン農園、シャー農園、そしてティンガティンガ農園ですが、引き継いだ際には農園管理がよくなく、肥料も使われていませんでした。そのため、これらの農園の伸びしろはまだまだあると考えています。実際、収穫量は84t→196t→235tと順調に推移しています。

一方で他にも多くの課題を抱えていました。道路のインフラ整備を行った結果、30分かかっていた時間が5分へ短縮したり、セキュリティが整備されず、コーヒー豆や農具等の盗難もありましたが、これも管理を推し進めることによって少なくなっています。他にも太陽光パネルの導入、農業用水のためのダム建設等も行っています。その結果、当初267名だったスタッフが500名程度まで増えているのです。このスタッフも当初は雇用形態も不透明でしたが、当社が関与することできちんとしたものにできました。

今後も現地に雇用機会を提供し、持続的な成長の支援を行っていきたいと思っています。

所感

タンザニアのコーヒーへの取り組みが良くわかるセミナーでした。良くも悪くも伝統的な製法が中心で、そういう意味では安心感をもって聞くことができました。また、政府や事業主体の熱意が感じられ、今後のタンザニアのコーヒー産業の発展も感じられました。

個人的に驚いたのは日本人が現地に根差した形で事業を形作っている「TANJA」の紹介でした。

もしタンザニアと取引したい場合はTANJAの例に学ぶことは非常に多いと思います。ネット上でもOSTIやTANJAの記事は多くあるので、自社(自身も含む)の現地事業展開を考えるなら、ネットで勉強しつつ、関係者にヒアリングしてみるのも一つだと思います。

もちろん現地展開は多くの困難が待ち構えているでしょうが、彼らのプレゼンテーションを聞いていると気持ちが前向きなものになりました。

このサイトではTANJAのような前向きな取り組みについて引き続き丁寧に取材し、発信していきたいと思います。

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