先日、米国農務省(USDA)から最新版のホンジュラスコーヒーレポート(リンク)が発表されました。当サイトではこの情報をもとにホンジュラスの統計情報等を整理しつつ、現地から吸い上げた情報を追加してコーヒー愛好家の皆さんに幅広く現状を認識して頂ければと思っています。
疑問等ありましたら、お気軽に下のコメント欄やSNSからご連絡ください。
USDAレポートのPoint
- コーヒー生産量、輸出量、作付面積、いずれも増加。
- 病害虫対策の結実と良好な天候の継続が見込まれ、今後も収量は増加予定
- 政府による減税、補助金等によるコーヒーセクターに対する支援を継続
- EU等の法規制と認証制度への対応によるレジリアンスな産業へ
直近の生産状況概要

2023/24年度の実績値は5.05百万 60kg bagsで、2024/25年度は5.52百万 60kg bags、2025/26にはさらに5.80百万 60kg bagsまで増加が見込まれます。2025年10月の作付面積予測は350千HAで前年同時期より3.3%増を見込んでいます。
これには複数の原因があり、2019年以降発生したコロナ禍で混乱に陥ったコーヒー収穫の改善、2020年に発生したハリケーンEta/Iotaの被害から土地やインフラが回復しつつあること、またさび病対策が順調に進んでいて、かつコーヒー価格が高水準で維持されている結果、労働力が産業に定着していること等が指摘されています。
なお、2024年4月にIHCAFE(イカフェ(ホンジュラスコーヒー協会):Instituto Hondureño del Cafe)が実施したサンプルアンケートでは回答した農家のうち76%がさび病の発生が減ったと回答しています。
さび病対策としてホンジュラスが期待を込めているのが国家育種プログラムによってサルチモール(Sarchimor)系統から選抜されたパライネマ(Parainema1)です。IHCAFEはこれらの品種への植え替えおよび普及にも力を入れています(2024年には古いコーヒーノキの植え替えを支援する法律もできています)。
輸出量に関するデータ

2023/24期は4.67百万 60kg bagsで、これが2024/25期に5.36百万 60kg bagsまで回復が予想されています。さらに、国内のコーヒー生産量の回復に伴い、2025/26期には5.50百万 60kg bagsの輸出にまで回復することが見込まれています。この背景にはホンジュラスにおいて安定的な天候が見込まれ、国際市場へのアクセスが安定的かつ市況が高値で安定していることが挙げられます。
なお、ホンジュラスは世界8位の輸出国で、中米最大の輸出国となっています。
主な輸出国

USDAレポートの中で特に触れているのが韓国向け輸出量の増加で、これは2018年に締結されたFTAによるものとされています(2021年効力発生)。現在韓国向け輸出は11位にまで増えています。
IHCAFEの農家支援
規模別 | IHCAFE登録農家 | 耕作面積(Ha) | 生産量(60kg) |
大規模 | 539(0.6%) | 24,511(8.8%) | 747,355(16.1%) |
中規模 | 4746(5.1%) | 62,494(22.3%) | 1,400,613(30.1%) |
小規模 | 87136(94.3%) | 193,092(68.9%) | 2,502,386(53.8%) |
IHCAFEは小規模農家の生産効率の向上について継続的な支援を行っています。特に生産効率と資金調達の支援に注力していて、前者については6つの農業センターを中心とした農業指導の充実、また2012年に構築したSAT(Early Warning System for Coffee Production)体制の構築によるさび病等への早期警戒をし、さび病の大量発生の再発を防ごうとしています。後者についてはIHCAFEや国際機関が効率的な生産を実施、記録の作成等を支援しつつ、各農家にあった多彩なファイナンスメニューを提供しようとしています。
またマーケティングの観点から近年認証コーヒー(オーガニック、フェアトレード、レインフォレストアライアンス等)の登録支援にも力を入れていて、2018/19年に生産量全体の42%を占めていたものが、2023/24年には52%まで増えました。
日本との関係

2024年、日本はホンジュラスから7166t輸入しました。中米ではグアテマラに次いで2番目の量です。また、価格は1kgあたり773円となっていて、主な中米のコーヒーの中では安価でお求めやすいコーヒーとなっています。ただし、コーヒー全体の輸入量に占める割合はわずか2%にとどまっています2。
最後に

残念ながら日本の輸入量は近年減少傾向にあります。そもそも総量が多くないため、特定の農園では変わらず、もしくは増加しているところがあるかもしれませんが、全体としては減少しています。
一時に比べてコーヒー価格は多少落ち着きを見せていますが、コーヒー消費新興国である中国、ASEAN等の輸出量増が見込まれるので、日本の輸入量が大幅に増えることはないと思われます。場合に四つ絵はホンジュラスにおける輸出割合はさらに低下するかもしれません。それはしょうがないことかもしれません。ただ、ホンジュラスのコーヒーが好きであるなら、いつもここで言っていることではありますが、情報発信することをお勧めします。中米にはコーヒー生産国が多く、各々競合・協調しながら世界へコーヒーを供給しています。はグアテマラ、ニカラグア、コスタリカと良質なコーヒー生産国が多く存在します。その中で一回一回のコーヒー豆の出会いを大事にしてほしいと、そんなことをもまとめながら思いました。