【時事】コーヒーチェーン店の値上げの流れ

コーヒーショップを訪れると店頭にコーヒーの値上げの張り紙が貼ってあったりします。昨年末(2022/11/29)、株式会社ドトールコーヒーショップがグループ傘下のドトールとエクセルシオールのコーヒー飲料を中心とした商品を2022/12/15から値上げすることについて発表がありました(参考:プレスリリース)。その後もタリーズコーヒーが一部商品の値上げを発表するなど、値上げの動きは続きそうな状況です(参考:プレスリリース

そこでコーヒーチェーン全体の値動きの動向について調べてみたら、興味深いことがいくつかあったので、結果をまとめておきたいと思います。

コーヒーチェーン各社のコーヒー価格と値上げについて

都内でよく見かけるコーヒーチェーンを中心に価格改定状況をまとめてみたのが上の表です(一部偏りがあるかもしれませんが、お許しください)。

この中ではすき家やビッグボーイを展開しているゼンショーホールディングスのカフェ部門であるモリバコーヒーが頑張って価格を維持しています。ちなみにこのお店、営業時間も全店的に長くて、開店前に数名の列ができている光景が見受けられます。さらにモリバではシングルオリジンコーヒーも320円で提供していて、これは驚くべき値段設定です。お手軽にちょっと贅沢したい方にはとても良いお店だと思います。

合理化を進めるお店

レジ周りの風景も合理化によってだいぶ変わりました。写真はドトール新橋外堀通り店

一方で、各コーヒーチェーンもただ単に値上げを実施していません。可能な限りの合理化を推し進めています。例えば、ドトールですが、一部の店舗ではシステム導入をして合理化を図ったり、かつてない効率的な店内設計に取り組んでいます。

ごちゃごちゃしがちなゴミ回りも細分化によって効率化を図っています。上と同じ店舗です。

また、プロントでは自社が展開する「エビノスパゲッティ」というブランドの店舗に調理ロボを導入しています。日経(2022年12月2日付記事)によれば、導入されたのはパスタを調理するロボでパスタと材料をセットすれば、そこから調理を代替してくれるそう。そして味は人間が調理するよりばらつきがないそうです。ただ、盛り付けは人間が行う必要があるそうなのですべてが代替されるわけではないようです。

記事にも書かれていますが、現在の調理ロボは繰り返し作業や単純作業がメインで人間を代替するところまではいってないとのこと。もちろん、スパゲッティメインのお店では人員削減にはつながるものの、他の店舗形態では多種多様な作業があるため、人員削減までは実現できず、作業の効率化にとどまるそうです。

記事で興味深かったのはこれらロボットの導入でコストカットができることもさることながら、重要なのは現場の職員の負担軽減につながって、バイト志望者が増えれば良いと考えていることでした。いずれにせよ、企業の効率化は様々なところで進められていました。

利便性やブランド価値について情報発信するお店

合理化に努めるお店がある一方、一層自社のエコフレンドリーだったり社会的責任に関するスタンスを説明して、一連の値上げに対して納得感のあるものにしようという動きもありました。。

例えば、スターバックスは値上げと同時期に、使い捨てのカップ、リッド(蓋)、カトラリーの削減を目指す施策の拡大および新素材への切り替えを行う宣言(プレスリリース)を行いました。

スターバックス プレスリリースより。ポリスチレン製の従来品に代えて、100%植物由来で、海水中で生分解する認証「OK Biodegradable MARINE※」を取得している “Green Planet®”製カトラリーをTO GO用カトラリーとして新たに導入

また、タリーズではHOT/COLD 兼用紙カップ、 一部の店舗にてシルバースキン(コーヒー豆皮)配合の紙ストローの導入の宣言(プレスリリース)を行っています。

タリーズ プレスリリースより。コーヒードリンク全般に言えますが、コーヒーの生産から抽出までにおいて結構な廃棄物がでていて、それらをどうやって削減していくかは長年の課題でもあります。

その他のお店でもメニューをリニューアルしたり、wifi機能を強化したりして、顧客離れを招かないよう、努力していました。これらから個人的に読み取ったことは自社の強みや得意なことをまずは行い、一連の値上げに対応しようとしているのかなということです。もちろん、これからも世間的な物価高は続いてしまうと思うので、今後どのように対応して乗り越えていくのか興味深いところです。

では、もう一つの表を紹介したいと思います。

スペシャルティコーヒー店舗の動向

上の5つはスペシャルティコーヒーの取り扱いをメインにするコーヒーショップのうち多店舗展開を行っているブランドです(ただし、これも個人的な偏りがあると思いますのでご容赦ください。他にも多店舗展開しているスペシャルティコーヒーのお店もありますが、それは次回以降に取り扱いたいと思います)。

そして、下の3つは店内でゆっくり過ごせる形式の喫茶店、もしくはコーヒー飲食店です。いずれのお店も価格戦略について非常に苦労しているという感じではないでしょうか。また、中には店舗の形態を変更したり、出店戦略の練り直しを余儀なくされているところもあるようです。

ただ、コロナ禍が収まり、おうちコーヒーで我慢していた人たち(もともとのコーヒー好きも、この機会にコーヒーが好きになった人も)が実際に店舗を訪れてみようという動きもあるように思えます。実際、2022年10月に行われたコーヒーの祭典SCAJ 2022ではかつてないほどの人であふれていました。今後もこの流れが続くか、そしてこれらの顧客層にどれだけ遡及できるか、鍵なのかもしれません。

全体としての光明

全体として値上げが続き、厳しい風潮にもみられますが、光明も見えます。日経の記事(2022年12月11日付記事)によると、SRI一橋単価指数(スーパー等のPOSデータを使い、消費者の購買動向を調査したもの)を用いた調査でわかったことは緑茶飲料やプレミアムアイスは低価格帯へシフトする消費者が多い中、紅茶やレギュラーコーヒーは高価格帯へシフトした人が多いとのこと。

これはコーヒーについては価格を下げて低品質なものを飲むよりは少し出して今までのものの値上げに付き合うか、異なるプレミアム商品を買うという行動になります。記事ではこの消費者の行動についてメーカーがきちんと消費者へ情報発信したことが原因としています。

もちろん、これはスーパー等での購入データをもとにした調査であるため、単純にカフェや喫茶店の売り上げにつながることにはならないでしょうが、家庭で淹れたてのコーヒーを飲むようになれば、店舗でもっと美味しいコーヒーを飲んでみようと思うのは自然のことなのかもしれません。いずれにせよ、お店としては情報発信をきちんとして、間口をひろく新しいお客さんを受け入れることが重要なんだと思います。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。次回はコーヒー価格と為替の動向についてまとめてみたいと思います。

at the cafe with barista
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