実際に飲んでみる
まずはSCAが定めるカッピングプロトコル*を流用しつつ試飲、そのあとにハンドドリップで試します。諸条件は以下に書いてある通りです。
カッピング
SCAのプロトコル(*)(**)に準拠するかたちで実施。ただしスコア等はつけていません。コーヒー豆は9gでカップは170ml入るもの(本来のものより少な目)。
ちょっと写真からはわかりにくいかもしれませんが、ナチュラル(右)はミディアムからハイロースト、アナエロビックは(フル)シティからフレンチっぽい色でした。焙煎度は各々の目指す形があると思うので私はどちらがいいというものはありません。そして、今回各コーヒーの味の感想を書いていますが、幾分かは製法というより焙煎度に起因するものもあろうかとおもいますが、それはご容赦ください。
粉の時点でナチュラルからはとても甘い花、強いジャスミンのような香りがしました。一方でアナエロビックからはさらにはちみつのような濃厚さが加わったような感じ。ただし、発酵臭のようなものはそこまでかんじませんでした。
お湯を入れてアロマの段階でナチュラルからはクランベリーをつぶしたときに感じられるさわやかな香り、アナエロビックからはそれよりいくぶんか濃いかんじ、そして少し発酵したときに感じられるワインのような香りがしました。タリーズのティスティングノートにかいてあった熟れたイチジクのような甘みと果肉感も感じられ、ナチュラルに比べて深みはますものの、個性としてはまろやかになっている印象を受けます。また、ワインの香りについても好みが分かれるかもしれません。
冷めてからはナチュラルからは酸味が強いオレンジやライムのようなな感じ。一方のアナエロビックからは苦みの奥に甘みがあり、熟れたいちじくのような濃厚さが感じられました
今回は焙煎度も違い、異なる個性となっているので単純比較はできませんが、どちらからも十分なキャラクターが感じられました。
【参考】
ロースター | 焙煎度 | PH | Brix | 製法 | 所感 |
Tully’s Coffee | フルシティ~フレンチ | 4.98 | 1.36 | アナエロ | 発酵の独特な香りが、味と香りに奥行き与えている印象。少し深めの焙煎もあって味はクランベリーやみかんをジャムにしたような、果肉感と甘みが感じられる。 |
THE FIVE BEANS | ミディアム~ハイ | 4.91 | 1.54 | ナチュラル | 華やかな花の香りの印象。飲んだ時にはクランベリーのような強い酸味とあとからくる甘みが印象的。冷めてからは酸味がより際立つ。 |
n=2 |
*SCA Cupping Protocols:https://sca.coffee/research/protocols-best-practices
**SCA Modified Cupping Protocols:https://sca.coffee/covid19 (日本語版もあります)
ハンドドリップ(プアオーバー)
タリーズのコーヒースクールで推奨していた2人分35gで400mlの抽出で各々実施(普段は35gで600mlの抽出とのこと)。スクールではメタルドリッパーを使っていましたが、家にメタルドリッパーがなかったのでコーノのペーパードリッパーで代替(これは反省点。今度そろえておこうと思います。)
ナチュラルの場合も同様の条件で抽出しています。
基本的に上述したティスティングと同様ですが、ペーパーフィルターで油分等がカットされ、幾分かクリアになっているかもしれませんが、どちらの場合もキャラクターを感じられました。
参考
ロースター | 焙煎度 | PH | Brix | 製法 | 所感 |
Tully’s Coffee | フルシティ~フレンチ | 5.00 | 1.99 | アナエロビック | – |
THE FIVE BEANS | ミディアム~ハイ | 4.85 | 2.01 | ナチュラル | – |
n=2 |
全体感想
両方とも良質な個性を持っているという印象を受けました。ナチュラルからは八朔のようなさわやかな酸味を中心に、濃厚なフローラルな香りがありました。一方で、アナエロからは酸味自体はナチュラルに比して若干抑え目ながらも、きちんと感じられ、かつ濃厚ないちじくの果肉感のようなあつみと味が感じられました。
で、どちらも高い位置にあるコーヒー豆だと思います。もちろん、カッピングする際には点数を伴い、確かにカッピング用の点数はある程度差が発生するのかもしれません。ただし、ある程度色んなものを飲んだうえで個人が飲む場合は好みの範疇かなとも思います。両方とも美味しかったですが、とんでもない新しい発見があるというわけではなく、飽きずに色んなシーンに合わせて飲めるコーヒーでした。
逆に言うと良質なアナエロビックコーヒーが作れる生産者は当然のように高品質のナチュラルや、環境によってはウォッシュド等が作れるんだろうなと思えるものでした。そのうえで、価格が同程度だったら好み、価格が大きく離れるんだったら、ナチュラルか、もしくは他の豆をさがすかも、なんて思ったりしました。
いずれにせよ、同じコーヒー豆が製法によってこうも異なる味と香りを演出できるのかと感心せずにはいられませんでした。今後もオスマンサス農園の取り組みや生産する豆を追っていきたいと思います。
参考websiteおよび文献:
- Osmanthus 農園:https://www.instagram.com/fincaosmanthus/
- TULLY’s Coffee school :https://www.tullys.co.jp/school/
- THE FIVE BEANS:https://www.five-beans.com/
- 外務省ホンジュラス共和国基礎データ
- Honduras: Coffee Annual | USDA Foreign Agricultural Service、2018,2019,2020
- What’s “Anaerobic Fermentation” and Why Is It So Popular All of a Sudden?, Cafe Imports
THE FIVE BEANSさんではオンラインショップで今回紹介したオスマンサス農園の豆をはじめ、様々なストーリーを兼ね備えたコーヒー豆を扱っています。興味のある方はHP経由ECサイトを訪問してみてください。各豆のストーリーを読むだけでも妄想が止まらなくなります。
アナエロビックファーメンテーションについてはネット上にも様々な記事が上がっていますし、Youtube等の動画サイトでも議論が交わされていることが確認できます。興味ある方はぜひ探してみてください。