店主のショーンさんと見切れている猫店員のキャプテン。間違いなく素敵なお店に違いないと思わせる装幀。ブックカバーは東京蚤の市で購入したもの。驚くほど色んな良品にであえた場所でした。
内容
この本の舞台はスコットランドの地方都市ウィグタウンにある中古書店です。
ウィグタウンはスコットランドのどこにでもあるような地方都市です。農作が中心で、かつては乳牛や蒸留酒の工場があありました。しかし、90年代に入るとこれらの工場が閉鎖され、200以上の雇用がなくなり、若者は仕事を求め、街から出ていくようになり、街の活気が失われました。
危機感を覚えた住民は、98年にStrathclyde大学が公募したスコットランドの”本の街”復興計画に応募しました。
結果、他に応募した5つの都市を抑えて“本の街”として選ばられました。それまで一つの本屋しかなかった街に大学や行政の後押しもあって、最終的に20もの本を扱うお店ができました。以降、ヨーロッパを中心に多くの”本の虫”たちに愛される街になりました。2000年代はいるとビール醸造所もでき、少しずつですが、街に明るい笑顔が見られるようになりました1。
Embed from Getty Imagesそんな街にこの本の著者Shaun Bythell(ショーン バイセル)さんのお店があります。
お店の名前はそのまんま『The Bookshop』。店名と同じくらい目立つ看板には『The largest in Scotland』という文字もあります。お店のサイトや紹介記事にはもう少し正確に『largest second-hand book shop (最大の中古書店)』と紹介されています。いずれにせよ名前に恥じないくらい広い売り場面積を誇り、在庫も充実しています(ただ、スコットランドの中古書店業界で本当に一番なのかは知りませんが、誰も目くじらをたてて怒る人なんていないですよね?)。
この本には、そんなショーンさんのお店が送った2015年の営業日を中心とした日記と、この時代に古書店を営むということがどういうことについて想いを古書店について書かれた本を引用しながらまとめた12のエッセイが収められています。
“The Bookshop”でどんな店員によって運営され、どこから本を仕入れ、どんなお客さんがくるか、どのようなイベントが行われるかが淡々と、時にユーモアを交えながら記されています。
また、ショーンさんの目は店外にも向けられています。庭の芝生が緑づくのに街の春を感じ、ツバメがアフリカへ飛んでいくのを眺めながら長い冬の始まりを感じたりします。時には友人たちと山登りや渓流釣りへ、と。この本は本屋さんの屋本以上の、もしかしたら新しい生き方を教えてくれている本なのかもしれません。
日本でも本屋さん本は人気ですが、時には異国の本屋さん本を読んでみてはいかがでしょうか。本屋さんとして日本の本屋さんと同じ問題を抱えていることもあれば、ウィグタウン特有の喜びや問題を持っているショーンさんの姿に何か発見できるかもしれません。もしかしたら、とびっきりのヒントがあるかもしれません。
Confessions of a Bookseller: THE SUNDAY TIMES BESTSELLER (The Bookseller Series by Shaun Bythell) (English Edition)Bythell, ShaunProfile Books2019-08-29
1BBC NEWSの特集記事『Wigtown: The ‘tumbleweed’ town transformed by books』を参照(リンク)。本書内ではこの経緯に触れている場面はありません。