【本紹介・感想】多様性を考えるきっかけに『レイラの最後の10分38秒』

【内容】

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 タイトル中の『最後の10分38秒』は、心臓が止まってから脳が活動を完全停止するまでの時間のことです*。この約10分間は、一般的な人の一生に比べると短く思えますが、人の心臓が止まってから脳が完全停止するまでの時間と考えると、長く思えます。そんな短くも長い時間に死にゆく人間は何を考えるのか、本来であれば本人以外は誰も知ることができません。でも、これに対して答えが欲しくなるのが人間ですよね。そんな題材に挑戦したのが本作です。

 物語の主人公レイラはトルコの旧都イスタンブールでセックスワーカーを生業にしていました。そんな彼女が無残にも生涯を閉じようとするところからこの本は始まります。

彼女の心臓が止まってから脳が完全に機能を停止するまでに浮かんでは消えていく記憶の数々。記憶の中には良いことも悪いことも無数にありました。そのうちのどれを彼女は思い浮かべたのか。それは思い出すに値する内容だったんでしょうか。そして、彼女はなぜ死ななければならなかったのか。それらが彼女の記憶と、そして彼女の親友たちとの思い出から詳らかになっていきます。

トルコ・イスタンブールで力強く仲間たちとともに生きたレイラの物語は、何気なく自由を謳歌している日常がいとおしく感じられるようになるとともに、日々迫害されているマイノリティが間違いなく存在するということを教えてくれる、そういう本です。

レイラの最後の10分38秒

レイラの最後の10分38秒エリフ・シャファク早川書房2020-09-03

*Doctors find patient brain activity continued for 10 minutes after death by Bob Yirka , Medical Xpress dated MARCH 10, 2017(著者が参考にした事柄に関するインターネット記事です。一つの記事であって実際にこの脳波がどういうことを示唆するかについてはさらなる調査が必要と記事には書いてあります。)

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