【本紹介・感想】インテリが本気を出すと変人的行動にしかみえない?『ゼロからトースターを作ってみた結果』

トースター作りにおける守るべきルールたち

ルール
  1. トースターは店で売っているようなもの
  2. トースターの部品はすべて一から作る
  3. 自分にできる範囲でトースターを作る

1.は究極的には妥協すれば、二本の熱電源でトーストできることができるから、目標は店で売っているものとしています。2.は本当の何もない状態から作るとしたら、現在持っているものをすべて捨てて裸で始めるとかになっちゃうけど、トーマスは今の時代に生きているからそれは不可能。原材料は掘られた状態からというところで落ち着きます。3.は、手に入れた原材料をいきなり工場へもっていったりはしないということ。

サブルール
  1. 飛行機の利用は不可。それ以外は可能
  2. デザインソフトやロボ以外の一般的な道具の利用可

まぁ、今思うとルール3.がある時点で柔軟性はある程度確保されているんですよね、そして、サブルール2.も範囲がざっくりしているんですよね。とにもかくにも教授にこういうことを説明するトーマス。

素材を求めてイギリス国内を方々へ

閉山した鉄鉱石の街へ

教授との会話で内容が整理できたトーマスはイギリス国内を旅することとなります。産業革命をいち早く迎えたイギリス。かつては多くの資源を産出していました。

まず、トーマスは閉山した鉄鉱山を訪れます。そこでも出会いに恵まれ、かつては鉄鉱石を採掘していた鉱山を案内されることに。そこで栄えていたころの話を聞き、また現在の寂れてしまった様子を聞くにつれ、少しなんともいえない空気をかもし出したり、、、あまりしません。トーマスはこの辺はあくまで中立で皮肉も含めた感想を述べています。

鉄鉱石を手に入れたトーマス、いよいよ製鉄という訳なのですが、恐ろしいことにこれだけ製鉄に関する書籍が巷にあふれているものの、産業の力を借りずに製鉄する知識を与えてくれる本をトーマスは見つけられなかったといいます。そこでトーマスは古典を読み解くことに。中には不安になるような錬金術的用語もあったようだが、何とか製鉄のヒントを得ます。そして、慎重な検証と可能性を検討した結果、製鉄に使う道具は電子レンジ(?)。

この辺のロジックはある意味見事で、ぜひご自身で読んでほしいと思います。とにもかくにも色んなロジックを使いながら、それでもなるべく自らが掲げたルールを順守してトースターを作っていきます。

生成が一番難解だったのはプラスチックのよう。これについてBPに問い合わせるも、色よい返事はもらえず(当然なのですが・・・)、途方にくれつつも、バイオケミカルの専門家やプラスチックリサイクルの専門家にアタックすることに。そして彼の超解釈で、プラスチックから再生成することでOKとすることに。プロピレンのおおもとは石油で、それはもともと化石等が液体化したもの。現在地上にあふれているプラスチックだって、長いスパンで見れば同じことが起こるんだろうからというものだけど、もう、この辺になると、トーマスも読者も意地になっていて、心からトースターよ、出来上がってくれと思っているはずだから、笑いながら読み進められるんです。

本書では、トーマスがそんな風に自分で作った諸条件に四苦八苦しながら、銅やニッケルを探すシーンについても面白おかしく紹介されています。

そして、、、最終的にトーマスはトースターを作り上げることに成功します。

Toaster Project installation at V&A as at August 2017.jpg
By PamD – Photograph taken by me in the V&A, CC BY-SA 4.0, Link

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