SCAJ主催中級セミナーおよびサーティファイドカッパー試験体験報告

先日、日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)が主催した中級カッパーセミナーとサーティファイド・スペシャルティコーヒーカッパー試験を受験、合格していたので、その体験をまとめました。この記事がこれから認証試験を受ける方やカッパースキルを維持したいと考えている方のお役に立つといいなと思っています。

なお、中級セミナーについては過去に一度記事としてまとめてもいますので、どちらか一つを参考にしていただければ試験対策としては大丈夫だと思います。ただし、前回と今回では異なったコーヒー豆が使われていますので、練習用のサンプル検体として何を使えば悩んでいる方は両方とも参考になるかもしれません(前回記事リンク

中級セミナーの目的と概要

SCAJは初級カッピングセミナーを受講された方から、そのスキルを維持できるようカッピングセミナーの要望を多く受けていたそうです。そのため、既存のカッピングセミナーを初級として、新たにテイスティングスキルの維持やキャリブレーション(味覚の調整・校正)のための中級カッピングセミナーを設けたそうです。

なお、初級がスペシャルティとコマーシャルコーヒーの見極めとカッピングフォームの記入方法の習得がメインなのに比べて、中級はスペシャルティ・コマーシャル、そしてボーダーにあるようなコーヒーの特徴をつかみ、正しくスコアリングすることを主眼としています。

中級セミナーの概要については以下の通りです。

参加SCAJ会員:16,500円    
SCAJ非会員:22,000円
募集人数東京会場: 定員12名 (最少催行人員 6名)
受講資格SCAJ テクニカルスタンダード委員会主催の 『初級カッピングセミナー』 を受講していること
※当日はカッピング手順、カッピングフォームの付け方の説明はなし。
当日のお持ちものカッピングスプーン/エプロン/筆記用具/電卓/マスク/健康チェックリスト
*カッピングスプーンは、当日受付にてもSCAJのカッピングスプーン(1,500円・税込)を購入可。
セミナー内容9:15~    受付開始
9:30~10:30  4サンプルのカッピング後 全体セッション
10:30~12:00 4サンプルのカッピング後 特定項目の個人指導
13:00~14:30 4サンプルのカッピング後 全体セッション
14:30~16:00 4サンプルのカッピング後 特定項目の個人指導
※教材用サンプルコーヒーは、Top Specialty ~Commercial Coffeeサンプルを使用します。
SCAJのホームページより抜粋・一部加工

中級セミナー内で使われた検体サンプルとスコア

当日、使われたコーヒー豆のサンプルとスコアは以下の通りです。スコアはテクニカルスタンダード委員会の方々のものです。受講生がカッピングを行っているとき、隣の部屋で委員会の方々も同様にカッピングを行っています。

下表ではスコアのレンジがやや広いものもありますが、基本的には同じ方法で評価しているので点数は収れんしていきます。ちなみに点数に納得感がない場合はセミナーの講評の際に質問すればいいと思います。

第1・2回セッション・ナチュラル

銘柄Notes点数(1、2回目)
(1)Brazil no2ロースト、ぺーパリー、アーシー69-70、68-70
(2)Nicaragua Limoncilloシトリック、チョコレート、ブランシュガー76-79、78-79
(3)Brazil Carmo Estateシトラス、アプリコット、チョコレート、ジューシー等81-84、81-82
(4)Ethiopia COE Naturalフローラル、グレープフルーツ、ピーチ、プラム等86-87、86-87.5
1回目と2回目で順番を入れ替えましたが、そこは省略して点数情報のみ記載しています

午前中はナチュラルのセッション。ボーダーライン上のサンプル検体2つについて、似たようなノートが出てきていますが、(3)ブラジル/カルモ・エステートのほうが豊かなプロファイルとなっています。一方の(2)ニカラグアもそこまで悪くなく、お店によってはスペシャルティと紹介される場合もあるかなというものでした。ただ、結果としてプロファイルは乏しく、ここに書いていない情報だとアフターテイストも若干短めでした。

第3・4回セッション・ウォッシュド

銘柄Notes点数(1、2回目)
(1)Guatemala SHBぺーパリー、ストロー、ダスティー68-70、67-70
(2)Guatemala SHB Mariageチョコレート、スムース、フラット78-80、76-77
(3)Colombia Villa Fatimaシトリック、ジューシー、シュガー等82-83、82-83
(4)Peru COE Mix (Geisha)フローラル、レモン、マスカット、プラム等86.5-87、86.5-88.5
1回目と2回目で順番を入れ替えましたが、そこは省略して点数情報のみ記載しています

午後はウォッシュドのセッションです。上の点数でも確認できますが、(2)グアテマラの地域指定のものは(1)そうでないものとは次元が違うほどによくなっていました。(2)はネガティブなものがほとんど感じられず、検体によってはぎりぎりスペシャルティといった感じだったようです(私の場合は個性が感じられず、そこまでの評価にはなりませんでしたし、若干ぺーパリー感があったので少しスコアを落としています)。

これらから感じられるのはボーダーライン上のものの差異は(i)フレーバープロファイルが(ネガティブが少なく)ある程度出てくるか、(ii)アフターが心地よく残るか、くらいかなと思います。もちろん、突き詰めればもっと差は出てくると思いますが、大まかにこれくらい意識すれば順位は間違わないと思います。あとはスコアがきちんと反映できるかどうかですが、この辺はカッピング時に調整していくしかないかなと思います。

なお、4回目(最後)のセッションはすべての疑問を解消すべきタイミングです。もやもやしてセミナーを終えると、後のカッピング評価に影響が及びますし、仮に試験を受ける場合は致命傷になりかねません(まぁ、大げさな言い方ですが、お金がかかっている以上、何度も受けたくないですよね)。

中級カッピングセミナー時の注意点

1番がトップ、2番がコマーシャルです。3と4で迷った感じの4回目のセッション。カップの減り方でお分かり頂けますよね

以下は私がこうしたら有意義かもしれないと思った点についてまとめてみました。参考になれば嬉しいです。

キャリブレーションの場

中級カッピングセミナーは委員会のカッパーの方々のスコアにアジャストしていくのが主眼となります。初級でも経験していると思いますが、ここは自分の好みを主張する場ではありません。たまにコーヒーの得手不得手や好みの話になりますが、それは脇に置いといて、SCAJ基準でどのように採点を行っているかについてすり合わせを行うのが目的となっていますので、それに集中すればよいと思います。

カッピング・プロトコルを復習しておく

中級ではカッピングの流れ(カッピング・プロトコル)に関する指導がありません。一方、参加者の中には久しぶりにカッピングで、ほかの方の手順を参考にしている方もいらっしゃるように見受けられます。これは非常にもったいないので、中級セミナー前に段取りについてはおさらいしておいたほうが良いと思います。

午前中のセッションはカッピングの流れを再確認するところでもありますので、どんどん先陣をきって行動すればいいと思います。間違いがあったら講師の方が指摘してくれます。ちなみに私はアロマのブレイクの作法をほかのものと混合していました(SCAJ式の正解は4回きちんと深くスプーンを入れて、香りをかぐ形式)。

カップの見極めをなるべく短時間で行う

一番良いものと悪いものはフレグランス(ドライアロマ)の段階でわかるはずです。そうしたら、味見(スラーピング)はそんな回数を重ねなくても大丈夫なはずです。もちろん、点数の付与のために軽い確認は必要になりますが、ここで時間は取られないほうが吉です。

また、言うまでもないことですが、コーヒーの温度が低くなると、フレーバー等については確実に検知しにくくなります。酸とかはよくわかるかもしれませんが、それ以上に多くの情報が得にくくなることは認識しないといけません。

講師の方に疑問をぶつけましょう

講師の方は一人当たり2~3人を担当してカッピングフォームに関するフィードバックをしてくれます。可能であればいち早く自分のカッピングフォームを持って行ってください。2番目以降だと、ほかの方の情報が入って、採点に自信を持てなくなったりします。もちろん、ここで修正してしまうのは悪手で、自分の評価をきちんと伝え、もし見解が異なる場合は理由を確認して修正していくとよいと思います(その際もコーヒーは温かい状態のほうが確認しやすいです)。

以上が事前に注意しておくとよいのではないかと思ったことです。ほかに何か気づきがあったら下のコメント欄等に残しておいてもらえると嬉しいです。

サーティファイドカッパー試験概要

スケジュール15:50~   受付開始
16:00~   実技試験(ブラインドカッピング)
17:30    終了予定
受講資格SCAJコーヒーマイスター有資格者(有効な認定書を所持)
SCAJテクニカルスタンダード委員会主催の中級カッピングセミナーの受講終了者
(同日に中級カッピングセミナー受講する場合も含む)
SCAJジュニアスペシャルティコーヒーカッパー有資格者

※上記3つの条件を満たしている場合のみ受験資格あり。
但し、ジュニア資格認証講座とサーティファイド資格認証講座を連日受講する事は不可
受講料【試験のみ受験】SCAJ会員   11,000円(税込)
【同日中級セミナーも同時受講する場合】 5,500円(税込)
※当日中級セミナーと試験を同時受講する場合は、セミナー受講料(SCAJ会員16,500円)と合計で、SCAJ価格22,000円(税込)。
※非会員はコーヒーマイスターの有効な認定書を所持していないため、受験不可。
定員6名 
試験内容中級カッピングセミナーに基づくブラインドカッピング
SCAJのホームページより一部情報粋・加工

流れは初級と同様です。まず、テクニカルスタンダード委員会の方がフォームに関する諸注意を促してくれます。初級が70点(満点は100点)がボーダーラインなのに比べて、中級は80点がボーダーラインとなります。そして、カッピングフォームの記入の正確性に20点の配分がなされているので、ここを落とすと合格はほぼ難しくなります。なので、名前、日付、テーブル番号、認定試験のマーク、検体番号、アロマの強弱、サンプルローストの色合い、計算等々、間違いないように、と重ねて念押しされます。

注意すべき点は午後のウォッシュドのセッションをイメージしつつ、コーヒー豆を分類することでしょうか。それらと比べて味のプロファイルは豊かかどうか、その結果、点数は上か下か、イメージはまだ比較的新しいはずなので、それらを意識すればスコアリングは大丈夫だと思います。

いずれにせよ、トップスペシャルティとコマーシャルの2つが分かれば、残り2つをどう区分するかということになろうかと思います(本来はコーヒー豆を公平に評価しないといけませんが、これは試験なので、すべてが優秀な豆ということも、すべてが悪い豆ということもありません。ちょっとずるいですが、そういうものだと思って割り切りましょう)。

もし対策をするとしたら、上述したようなコーヒー豆をブラインドで飲み比べるというのがいいかと思います。その際はよくシャフルして倍の検体等で飲み比べたり、マッチングさせたり、楽しみながら工夫するといいかなと思います。

カッピング・マッチング
コーヒーカッピングの風景。この日は3検体を1セットとして内1検体仲間外れを作ってカッピングしてみました。ちなみにローストレベルは統一したほうがより良い試みになると思います。

ということで、試験としてはそこまで難しくない印象をもちました。もちろん、初級に比べると取るべき点数のハードルは上がっているのですが、内容自体は初級の延長線上にありますし、当日のセミナーでアジャストできて、ケアレスミスをしなければよい結果になるのではないかと思います。

個人的にはこの後のスキル維持が難しいなと思っています。なので、機会をとらえて引き続きいろんなカッピングセミナーに参加しようと思っています。あっ、そうそう近々Qグレーダーに関する受験記録もまとめてアップしようと思います(記録自体はできていたのですが、PCがダウンしていてアップできずにいました)。また、次の記事でお会いできればと思います。

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