パンが並ぶまでのストーリーが綴られる『CRAFT BAKERIES パンの探求 小麦の冒険 発酵の不思議 2015 Edition』

CRAFT BAKERIES表紙

内容

本の帯内側は掲載されているパン屋の職人さんたちの味のある手が並ぶ。

 パン作りに人生をかけた国内外の職人さんのこと、そして彼らが作り上げたお店のこと、さらにはそのお店で使われている材料から想いまで、この本には事細かに書かれています。

 紹介されいているパン屋さんは、多くの人が知っているであろうお店から、メディアにあまり載らないようなお店まで、本当に幅広いです。しかも、その紹介記事は海外のパン屋さんとパン事情にまで及んでいます。

  そのため、この本を読めば パン屋さんが、どんな想いで朝早くに起きて、重労働といわれるような作業を経てパンを焼き上げているか、少しわかるし、そんな彼ら・彼女らが日々のパン作りを通じてどこに向かっているか、身に染みてくるような気がします。

 読み終わった後には、目の前にサーブされたパンや軒先で購入したパンがより一層いと美味しく感じられること間違いなしです。全国で行われているパンフェスタに行く前に一読してみるといかがでしょうか。

感想

著者は青山パン祭りのスタッフ

この本の編纂者はBread Lab. を立ち上げた入江葵さん。入江さんは青山パン祭りの企画・運営で、中心的な役割を担ってきた人です。これをさらに発展させて継続的にパンに関するイベント企画やセミナーを主催する会社としてBread Lab.を立ち上げたそう。

そんなパン愛にあふれる入江さんならではのパン屋さんの紹介がこの本にはありました。

パン愛溢れる紹介や企画記事が盛りだくさん

 パン屋さんのキャリアを紹介しつつ、自然と職人さんの一日の行動やパン工房での作業について紹介したかと思えば、店主と小麦や使っている臼の話をし、さらにはどんな酵母を使っているか事細かに記しています。

 個人的にツボだったのはパン屋紹介の間にあるコラム的なもの。その中でもポートランドのパン屋さんと日本のパン屋さんが各々作る酵母を交換してパンを作るというものはとくに秀逸でした。

 使い慣れた職人さんらしく、すぐに酵母の特徴を見抜いてそれにあったパンをつくる、そして、酵母を提供した側にそのことをフィードバックすると、我が意を得たり見たいな、やり取りがあって、それはもう気持ちよく読めました。

 また、本書に掲載されている写真も特徴的です。一般的な雑誌等で取り上げられるカフェスペースや提供されるパンそのものよりも、職人さんたちがバックヤードで働く姿だったり、パンの発酵をすすめている風景だったり、とパン作りそのものにより多くの焦点があてられているものが多いんです。

 普段見ることができないその光景一枚一枚が、お店を紹介する文章と同じくらい雄弁にそのお店について読者にストーリーを訴えていました。

パン職人の想いについても

 そして、紹介されているパン職人さんたちが共通してみんな、自分たちが理想とするパンを作ることを通して街とつながり、人とつながって、その先にみんながしあわせになれればいいな、という想いを持っていることを強く感じられました。

 事実、この本に掲載されている多くのお店が所在する街にコミットしながら成長していっていることがよくわかります。それはできそうで、なかなかできないこと。その実情はパンを好きな人だけでなく、パンを生業にしたい人、もしくは町中で開業しようとしているすべての人に参考になるのではないかと思います。。

 ただ、この本が編纂されたのは2015年。今、読んでも十分に充実している内容だと思いますが、もうそろそろ新しいEditionが出てもいいんじゃないかな、と期待しています。次回がでたらタイムリーに購入したいと思っています。それほどに面白い内容の本でした。

次の一冊

本書でも紹介されているタルマーレの店主が書かれた本です。色んな経験を経て、パン作りを生業とすることになった店主さん。いいこともあれば悪いこともある、そんな様々な体験談で満ちた一冊です。

当サイト【Book and Cafe】では次の一冊に関する短い紹介文を募集しています。お返しは今のところ何もできませんが、ここにSNSアカウント等を記載した半署名記事をイメージしています。要は人の手によるアマゾンリコメンド機能みたいなものです。気になったかたはSNSや下のコメントもしくはお問い合わせ にご連絡頂けますと幸いです。

雑な閑話休題

 昨今、発酵ブームが続いています。味噌や漬け物を家で作る人が再び増えたり。原因を考えてみると、古くは雑誌などで取り上げられその人たちがやりこみ、その後その人たちが情報発信して、それが再度メディアで取り上げられたりしたからなのかな、なんて思ったりもしています。

多くの食品の生産過程を可視化した番組や動画などが公開された結果、酵母の伝承が各家庭に依存していたものから飛び越えて行われているのではなんて思ったりしました。

私自身はパン作りやコーヒーが大好き人間としてその過程で発酵行為があったことに端を発して興味を持つようになりました。正直に言うと、天然酵母はまだ取り組んだことはないのですが、時間をみつけてやってみたいなぁと、この本をよんでより一層強く思うようになりました(相変わらず影響を受けやすい性格です。)。

CRAFT BAKERIES表紙
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