今へと連なるコーヒー知識がぎっしり『珈琲、味をみがく』

内容

近年、スペシャルティコーヒーに対する理解が深まり、書店で見かける本もスペシャルティコーヒーに関するものが主流となりました。ただ、メインストリーム(コマーシャル)コーヒーに対して、そういう対となる分類が国内に普及したのは21世紀に入ってからです(厳密には1996年にスターバックスが日本進出を果たしているので、その頃を境に潮流は変わっているとは思いますが、考え方が普及するのはその後のことなのでそう書きます)。

一方、日本ではスペシャルティコーヒーという文化が根付く前から、独自の喫茶店文化が花開き、中でもコーヒー専門店や純喫茶では、並々ならぬ努力をもって至極のコーヒーを淹れようとしてきました。その一部は後にアメリカで勃興するサードウェイブ文化にも影響を与えたともいわれています。では、そのような文化の中で日本で培われたコーヒーやコーヒー豆に対するアプローチはどうだったのでしょう。よく言われるのがコーヒー豆の欠点豆を排除することが中心となっていて、コーヒーが持つよい側面に対する評価が少ないとことでしょうか。ただ、真実はそう簡単なものではないことがこの本から読み取れます。

そういったコーヒーに関する歴史を紐解き、当時の考え方を詳らかに教えてくれます。では、内容が古いかというとそうではありません。それらの知識は今の考え方を理解するのに大いに役立つものです。何より本書の著者陣のコーヒーに対する並々ならぬ熱意は、読者のコーヒー熱に火をつける、もしくは再燃させてくれる一冊となっています。

ということでコーヒーを片手に本書を読んでみませんか。きっと、この本を通じてさらにコーヒー愛が深まるに違いありません。

珈琲、味をみがく

珈琲、味をみがく和雄, 柄沢いなほ書房2019-10-01

内容を振り返りながら感想

4人の執筆陣

まず最初に本書は4人による共著です。

1人目はコーヒーの歴史や文化に関する章を中心に書かれた星田宏司さん。星田さんはこの本の発起人であり、本の発行元のいなほ書房代表を務める傍ら、珈琲文化研究会を主宰し、『珈琲と文化』という冊子も発行しています。

2人目の伊藤博さんはコーヒー生産から消費まで科学的な観点で研究していた人で、コーヒーに関する本を多数執筆しています。この本では世界各国のコーヒー豆の特長やコーヒーの品質とは何かについて担当しています。

3人目は、株式会社蘭館代表の鎌田幸雄さん。蘭館が運営する蘭館珈琲ハウスはネルでコーヒーを提供するお店で、この本でも生豆の選び方、焙煎方法、ブレンド方法から始まってネルドリップの点て方(本書の表現に倣っています)を担当されています。

最後にペーパーやサイフォン、そして喫茶店で出されるメニューのうち基礎的なコーヒーにまつわる飲み物を紹介している柄沢和雄さん。彼はユナイテッドコーヒー研究所を設立してコーヒーを中心に喫茶店文化振興の一翼を担ってきました。

そんな多分野で活躍された4人が集まってできたのが本書です。次ページから簡単に本書の内容を紹介したいと思います。

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