『ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス』の熱にあてられた状態で、映画感想を綴ってみる

映画についてのあれやこれや

感想と印象に残ったシーン

正直、先に書いた”映画を振り返る”が、あらすじであり、私にとっての映画の感想で、印象です。もちろん映画の全てに触れているわけではありません。先にご紹介した”映画の内容を振り返る”では映画の内容の半分も語れていません。

ちなみに上の映画を振り返った感想自体は、会場で販売されていたパンフレットを参考にしながら、内容に間違いがないよう、記憶を辿って書いたのですが、私にとってはどれも鮮明かつ印象的で、忘れがたいシーンでした。

だからこそ、ご覧になっていない方にはこの映画を観てほしいと思って、この感想文を書こうと思ったのです。

ただ、そう言いながらも、未鑑賞の方には読み飛ばしてくださいと先に申し上げたので、中でも好きなシーンをいくつかご紹介させていただきます。

一つ目はオランダの建築会社mecanooがNYPLのリノベーションニアポイント(プレスリリース)されたのをきっかけにNYPLを訪れ、職員向けに講演するところ。経験豊富な担当者が図書館に完成形はなく、日々変わっていくといい、また理想像は唯一 “The library”はないと語るところは印象的でした。

二つ目は上でも書いた舞台手話の方の話と実際の通訳風景(リンク) 。俳優の演技を手話で耳の聞こえない観客に届けることの特徴と面白さが本当に前向きに語られていました。特に独立宣言を参加者に感情の異なる方法で読み上げさせ、それを専門家が表情と節をつけて訳すところはとても秀逸でした。

三つめはすべてのボードミーティングと職員たち。NYPLの経営に関して話し合う幹部。どこまでも真摯な彼らがいるから、職員たちはついていくのかなと思いました。

他にも沢山好きなシーンが思い出されるのですが、それを書き始めると再び先の感想文になるのでここではやめておきます(笑)。

3時間半を踏まえて薦められるか?

「3時間半が短く感じた」という感想は決して言いません。正直言うと、NYPLの機能が多すぎて映画に集約するのが本当に大変だったんだと思います。上でも書いていますが、中には似たようなシーンもあります。それでも、ワイズマン監督はNYPLを語るうえでどれも必要と判断して本編に収めたんでしょう。確かに観終わってもそう思うのですが、それでも3時間半は長い(笑)。しかも、鑑賞料金にもきっちり反映されていますからね。ちなみに当日券は2000円(映画会員は割引価格1400円でチケット購入できるので、鑑賞前に会員になっておくことをお勧めします。会費は2年間で2000円で、抽選にはなりますが、岩波ホールでの講演会等への招待もあります。)

それでも、少なくとも図書館や本が好きな人にはお勧めの映画です。そうでなくとも、自分の業務や仕事の範疇について何らかの限界を感じている人にもヒントをくれる映画だと思います。

なぜなら、この絵以外は自身の役割や想いをきっちり決めてしまえば、できないことなんてないような気にさせてくれる映画だからです。ただ、それにはきちんと考えに考え抜いて、周りの人をきちんと説得していることが前提。また、自身の役割について明確に伝え、かつ行動で示していることも必要だということは、この映画で映されたとおりだと思います。

パンフレットでは民主主義や現トランプ政権との関係、図書館の未来像についても触れられていて、それらの様子は確かに映画からも読み取れるかもしれません。ただ、個人的には、それ以上に崇高な目的を掲げ、直近の政治に囚われることなく、日々の努力を通じて弱者に寄り添っているNYPLがあるんだな、と感じられ、気持ちを奮い立たせてくれるものでした。

私にとっては、そんな青臭い気持ちを少しだけ刺激してくれる映画だったのかもしれません。ちなみに影響をすぐ受けるブログ主は、DVD化されたら買いたいと心から思っています(笑)。

余韻に浸れる記念講演会とパネルディスカッション

映画の前後に観るのがおすすめなのが下にリンクした本作上映を記念して行われた記念講演会とパネルディスカッションです。

特にパネルディスカッションが印象的。単純にNYPLがすごいとするのではなく、冷静にその特徴や役割を認識しつつ、図書館としても、それ以外にも役立てられるものを映画から拾っていこうとして議事進行がなされるのが、本当に良かったです。

これをきっかけにモデレーター・野末俊比古さんをはじめとする登壇者の方々の本も読みたくなりました(笑)(はい、このようにブログ主は影響を受けやすいのです)。

付随して思ったあれやこれや

日本の図書館とアメリカの図書館はそもそも制度設計が違います。だから、どちらが正しいとか、こうなるべきだという感想は個人的には抱きませんでした。

ただ、図書館に対して今まで以上に様々な可能性を感じずにはいられませんでした。NYPLは市及び州からの運営資金として、年度にもよりますが、半分以上を得ています。そしてそれにも負けない金額の寄付を民間から集めるのに成功しています。

それは日本や欧州ではあまり見かけられないスタイルです。ちなみにNYPLの運営スタイルはアメリカでも稀有な存在になっているからこそ、映画化されていることは間違いありません(NYPLが特異なことについては、パネルディスカッションでも討論されています)。

このことに関して、大阪府の児童図書館のことを思い出しました。規模は全然違いますが、いずれも寄付がきっかけに設立されていることや、運営に際して寄付金をあてにしながら運営していくことは共通しています。

この辺について、各館の運営比較や分析していくのは楽しそうですね。私も週末時間ができたら簡単なものをやってみようかなと思いました。そして、利用者として、また一納税者として何か関与できることはないかな、なんて思ったりもするようになりました。

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